かつて「どこまでも自民党に付いていくしかない下駄の雪」と揶揄された公明党が、「自民1強」の政党状況で存在感を示している。
安倍首相が実現に執念を燃やす集団的自衛権の憲法解釈変更問題で、両手を広げて行く手を阻んでいるからだ。
首相は今も強気だが、この問題では大きくつまずいた。解釈変更の閣議決定先行、その後に与党協議、関連法案整備という方針だったが、与党協議先行、閣議決定先送りを強いられたため、実現の見通しが立たなくなった。
転機は「責任者は私」と言い切った2月12日の高姿勢答弁である。ブレーキを踏む公明党と歩調を合わせるように、自民党からも異論が噴出し始める。与党の取りまとめが先という話になった。
「1強」とはいえ、自民党は参議院で単独過半数に7議席足りない。関連法案の成立には他党の協力が欠かせない。安倍首相は、いざとなればみんなの党(13議席)との連携で、と踏んでいたふしがあるが、渡辺前代表の失墜で情勢が一変し、公明党(20議席)を最後まで当てにせざるを得なくなった。
15年の重み
それだけでなく、1999年10月以来、約15年の自公連携の重みは大きい。特に各選挙区での自民党の公明党依存は想像以上だ。公明党に逃げられると、自民党は次期総選挙の小選挙区で70議席減となる、と予想する関係者もいる。選挙が恐い自民党議員の悲鳴は無視できず、安倍首相は自公連立維持で行くしかない。
だが、公明党も今回は一枚岩ではない。山口代表は強硬な反対派だが、太田国交相は現実対応派と映る。もしかすると、創価学会の司令塔の機能不全やトップの後継問題が絡んでいるのかもしれない。安倍首相はその点を見据えて、公明党の切り崩しや懐柔、説得を試みる計画と見られるが、簡単ではない。
一方の公明党も、連立離脱や独自路線に舵を切っても、展望は開けない。連立離脱カードを振り回す気はなさそうだ。
自公とも、手詰まりだが、今後、落とし所を見つけて歩み寄るか、あるいは首相側が亀裂拡大を覚悟で突っ走るのかが焦点となる。
それにしても、与党の大内紛を傍観するだけの「多弱」の野党側の無力と無策は、日本の民主主義にとって、それ以上に重症である。
(撮影:尾形文繁)
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