日本の金融システムは今の時代に合っていない--大塚耕平・内閣府副大臣(金融担当)
世界的な金融危機の再発防止へ向けた、新たな金融規制の枠組みが議論されている。先進各国では金融政策や財政政策からの出口戦略が大きな課題ともなっている。こうした問題について、金融・郵政改革・経済財政担当で規制改革にも取り組む大塚耕平内閣府副大臣に、考え方や方針を聞いた。
--オバマ大統領は1月に米国の新たな金融規制案としてボルカー・ルールを発表しました。
米金融システムの問題点を考えると、現状に対する反省としてボルカー・ルールのような内容が出てくるのは理解できる。ただ、ボルカー・ルールが、普遍的でグローバルな共通規範になりうるかどうかは別の問題だ。2月6日のカナダでのG7財務相・中央銀行総裁会議における共同記者会見で、ガイトナー米財務長官は自ら「世界の金融システムは国によって多様であり、その多様性に配慮した対応をしなければならない」と切り出した。ルールづくりを含めた国際交渉は各国の意見や主張の妥協の産物であり、日本としても自らの考えを適切に主張していく。
--金融危機の原因は過剰流動性にあるとして、マクロプルーデンス政策が重要との主張があります。
大恐慌を契機に、先進国はマクロ経済運営において財政政策に依存するようになった。しかし、財政政策の限界に遭遇し、1970年代以降は金融政策にウエートがシフトしていった。その結果、実体経済以上の貨幣経済、すなわち過剰流動性を抱える構造が常態化し、国際的なバランスシートの資産側には、財政政策により発行された大量の国債やCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)等の証券化商品が計上されている。こうした構造は潜在的なリスクを抱えているので、マクロプルーデンスに取り組まなければならない。
--マクロプルーデンスを実現するのは難しいともいわれています。
マクロプルーデンスのアプローチには、国ごとの取り組みと世界的な枠組みをつくることの二つがある。
国ごとの取り組みとしては、過度に金融緩和に依存しないこと、財政健全化を進めることだ。ただ、金融市場には国境がないので、世界的なマクロプルーデンスの枠組みを議論しなければならない。G7やG20などの議論の場が用意されているが、参加国がコミットメントを負う形にはなっていない。財政的、金融的にリスクを高めている米国と中国が従ってくれるかどうか。世界的なマクロプルーデンスの実現可能性は、両大国がそうした枠組みに従う意思があるかどうかにかかっている。