JR西「銀河」学生の"痛烈な一言"が開発の引き金 古い117系のスタイルを維持しつつも大変身

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それともう1つのエピソード。JR西日本の役員が講義に出向いた大学で、学生から「旅行に新幹線は高いし、通学の満員電車では不快な思いもするし、私は電車なんて乗りません」と、聞かされたのだ。会社としては都市圏輸送も主要都市間輸送も充実させて、それなりに堅固な基盤が築けたとの自負を持っていたところなので、痛烈なパンチだったらしく、「ぜひ、彼女たちの心に響く列車を作ってほしい」という強い意思を伝えられたと言う。

WEST EXPRESS銀河の前でJR西日本と自身が込めた想いを語る川西康之氏(写真:レイルマンフォトオフィス)

そこで川西氏は、だれもが心に持っている想いを汲み、「遠くへ行きたい、を叶える列車」のキャッチフレーズを提案、その考えに沿ってデザインしたと言う。

9月11日の出発式のあいさつでも、「(新型コロナに見舞われた状況でも)人々は太古の昔・万葉の時代から遠くにいる恋人を想い、家族を想い、会いたい、行きたいという本能的な欲求を持ち合わせている。その想いを実現する電車がWEST EXPRESS銀河である」とメッセージを述べた。

1つだけに縛らないための設備と工夫

しかし、このような手探りのカスタムメイドの列車には新車を充てないのが常。117系6両編成が充てがわれ、リーズナブルな列車としてオール座席車、接客に携わる乗務員は基本的に車掌1人で車内販売等の要員はなし、というのが最初からの条件となった。

117系は車齢40年に達して廃車も進んでいるが、国鉄時代の車両はすべてが頑丈に作られているので、大改造に耐えられる。車体構造の見直しが進んだJR世代の高性能気動車を差し置き、40系気動車改造の観光列車が各地に多いのもそのためだ。JR西日本ではすでに681系の廃車も出ており、それを転用して改造すれば金沢方面への運転もできるはずだが、そうならなかったのは車体の基本構造ゆえなのだろうか。

さまざまな旅行者の構成、嗜好に応じられるよう多様な座席を設けること、1つの座席に縛らないことも、新幹線や在来の特急にない旅を提唱するフラッグシップとしての役割であった。そこで各種の座席や、いくつものフリースペースを設けることとした。長距離・長時間を前提とする列車として、足を伸ばして過ごせる席も欲しい。そこで、サンライズエクスプレス285系電車に連結された大部屋2段構造を念頭にノビノビ座席も設けることとなった。

ところが、117系を利用する改造車ゆえの制約もそこにある。サンライズより長時間の乗車になることや117系の天井が一般の通勤・近郊電車より20cmも低い点が「ほぼ寝台」のクシェットへと導いた。

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