JR西「銀河」学生の"痛烈な一言"が開発の引き金 古い117系のスタイルを維持しつつも大変身
つまり、昼間の乗車時間も長いのでサンライズのノビノビ座席より広いスペースが欲しかった。
しかも荷棚を設けることが困難なので、代わる収納場所としても必要だった。そこから、床面にスペースを取った2段ベッドで挟む区画を設ける寝台車スタイルになり、さらに特徴的な姿に連鎖してゆく。
上段の頭がつかえないようにするためには、下段の席を低くするしかなく、床面から15cmまで下げた。それに伴って下の席からも寝そべりながら外が見えるよう、窓の下辺を下げている。それが、通常より大きな窓が並ぶ部分となって、外観上でもアクセントになった。
また、改造車両の宿命として、空調装置も車内の姿を左右している。元来が通勤用車両として1両全体に仕切りがない構造のため、空調ダクトもワンルーム構造に合わせて中央で吸気して前後へ送り出す形になっている。それを無理に仕切ると、著しい寒暖のムラを生じてしまう。天井の低さからダクトを改造することもできず、したがって空気を全体に対流させる構造は変えられず、クシェット区画も通路との目隠しの仕切りをルーバーにして空気が通り抜けるようにした。
個室内でも自由な姿勢のくつろぎを
クシェットにはカーテンも設けなかった。仕切ってしまうと、乗客は「銀河」の意図として最も大事にしている車窓に目をくれず、結果的に閉じこもってしまい、加えて空調のムラが快適さを損なう。そのため、グリーン個室とした6号車を除いてあえて個々を隠さず、全体を開放する方向で間違いなしと判断した。
開放することや間接照明で適度に照らすことで人目が行き届き、治安的にもかえって担保できると考えられている。もちろん今どきの列車なので、車内に防犯カメラも新設された。
こだわりの構造という点では、6号車個室にも最たるものが現れている。個室という閉ざされた空間で長時間を過ごす際、車窓を見るのも食事をするのも同じ座席、同じ角度では窮屈このうえない。そこで同じ面積でも台形に変形させると、長い辺の側なら足も伸ばせるし2人で並ぶこともできる。
狭い辺を活用すれば、車窓をワイドに楽しむこともできれば2人で向き合うこともできる。2人で寝転がるにも余裕が生まれる。限られた空間で体勢の自由を確保するため、ぜひとも欲しかった構造であると言う。個室の外に出れば通路は“への字”になるので先が隠れ、奥行き感を出すのにも役立っている。
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