ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない訳

「1000円の壁」突破する仕掛けが生き残りの鍵だ

高価格に設定する理由は従業員の給料の確保だ。給料はラーメンの粗利の中から出ている。高価格はなかなか理解されない側面もあるが、価格に見合うだけの価値をしっかりと提供し、高い粗利を確保して給料をはじめとする従業員の待遇改善に努めていくことが欠かせない。

「ミシュランガイド東京」でラーメン店として2015年に世界で初めて一つ星を獲得した「Japanese Soba Noodles 蔦」(代々木上原)はベーシックな醤油Sobaは1200円ながら、最高で3550円のメニューも提供している。「黒トリュフチャーシュー味玉醤油Soba」「黒トリュフチャーシュー味玉塩Soba」だ。思い切った価格設定をした理由は、原価を惜しまない上質な食材を使っているからだ。厳選された小麦を使った自家製麺や、スープに使う青森シャモロック、天草大王、名古屋コーチンなどの地鶏、そして香りの高い黒トリュフはラーメンの上にダイレクトに削って載せる。

「昔は一般的な食材しかなかなか手に入らず、その中には粗悪なものが多かったですが、今はおいしい食材が手に入りやすくなりました。体にとっても安心で、かつおいしいものが作れる世の中になったので、『1000円の壁』は気にせずおいしいものを作っていこうとしています」(蔦・大西祐貴店主)

単純な低価格競争に甘んじていてはジリ貧

ここ数年は外国人観光客が増えた影響もあり、都心のラーメン店の価格は上がっていく傾向にあった。上記の人気店においてもその動きがあったと言える。

コロナ禍で外国人観光客が日本に来られない今、同じ価格で営業を続けられるのかという課題はあるが、人気店の高価格化はここ数年のトレンドと見ていいだろう。逆に低価格の流れを作っているのはチェーン店なのである。

人件費や原料の高騰に加えて、新型コロナウイルスの影響で客数の減少が止まらず、今後もラーメン店の価格の見直しは避けられない。

日本そばの業界に高級そば店から立ち食いそば店までレベルの差があるように、ラーメンの世界も1000円超えのラーメン店と低価格のラーメン店が共存できるような形を作り上げられるか。これまでは高級食材を使用しているお店だけが価格の上乗せで先行できたが、ラーメン店としては“職人の技術”に対価をどう払ってもらうかの仕掛けを考えて、実行していかなければならない。単純な低価格競争に巻き込まれていては、ジリ貧だ。

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