デジタル化でハンコ廃止に山梨県知事の大反論

本当に目指すべき「行政のデジタル化」の本質

「デジタル化推進とハンコ廃止は別物だ」と訴える山梨県の長崎幸太郎知事(撮影:今祥雄)
新型コロナ禍で政府のIT・デジタル化が遅れていたことが露呈し、菅義偉政権は行政手続きのデジタル化を政策の「一丁目一番地」に位置づけた。河野太郎行革担当相は、各省庁に押印を原則すべて廃止するよう要請。上川陽子法務相も婚姻や離婚手続きの際の押印を廃止する意向を表明した。
企業の間でも、ハンコを押すために出社しなければならない現実が浮き彫りになり、「ハンコがテレワークや新しい生活様式の流れを阻害している」と指摘されている。いわば「ハンコ悪玉論」が語られているが、こうした風潮に異を唱えているのが山梨県の長崎幸太郎知事だ。
山梨県は歴史的に印章産業が盛んで、「甲州手彫印章」という伝統的工芸品もあり、現在も多くの板木師(はんぎし、版を彫る彫刻職人)が活躍している。ハンコ悪玉論に疑義を呈す理由は何なのか。長崎知事に聞いた。

「押印の省略」と「ハンコ廃止」は異なる

――知事は「脱ハンコ」「ハンコ廃止」という言葉に疑義を呈しています。

最初に断っておきたいのだが、私たちは社会のデジタル化そのものに反対しているわけではない。むしろ大いに推進すべきと考え、山梨県庁内でも押印を省略できるところは省略していこうと取り組んでいる。

また、東京都心の企業などでテレワークが拡がれば、二地域居住が増えることで山梨県は恩恵を受ける。場合によっては山梨こそデジタル社会の最大の受益地になりうる。その意味でもデジタル化、テレワーク推進は山梨にとって追い風で、大いに進めてほしい。

ただ、そのことと「脱ハンコ」「ハンコ廃止」は論理的につながらない。政府が旗を振っている行政手続きのデジタル化や社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)は「押印の省略」だ。押印とは、印鑑を押す行為のこと。不必要な押印があれば省略しようというのがデジタル化、DXの肝だ。

「押印の省略」と「ハンコの廃止」は意味するところが違うのに、同じ意味で使われてしまっている。完全にミスリード。にもかかわらず政府もマスコミも、改革の旗印のように「脱ハンコ」「ハンコ廃止」と言っている。ここに異議を申し上げている。

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