自分の評価を極端に気にする人が心を病む理屈

不安が高じて孤立すればますます行き詰まる

「他人の目に自分がどう見えているか」を考えすぎて不安を高めている(写真:DragonImages/iStock)

実は読み終えてから少し時間が経っており、そのため取り上げるタイミングを失ってしまったように感じていた。しかし、いくら時間が経過しても、本書が投げかけてきた事実の衝撃は消えてくれないのだ。つまり、それだけインパクトがあったということだ。

そこで、遅ればせながらご紹介させていただくことにした。『格差は心を壊す 比較という呪縛』(リチャード ウィルキンソン、ケイト ピケット 著、川島睦保 訳、東洋経済新報社)がそれである。

富裕層と貧困層の所得格差が大きな社会では、格差の小さな社会よりも、人々はさまざまな健康や社会の問題に苦しむ可能性がある。
私たちは2009年に刊行した『平等社会』でこのことを指摘した。その本で提示したデータによれば、不平等は人々の心に重大な悪影響を及ぼすが、その多くは社会的なストレスが原因だった。(「プロローグーー格差の大きな国で起こること」より)

そんな前著を受け、精神的な影響や社会的なストレスとはどのようなものであるかを分析したのが本書だ。不平等が人の心をどのようにむしばんでいくのか、精神的な不安はどのようにして高まっていくのか、それらがどのような精神疾患や情緒不安につながっていくか、など。

自分の社会的評価への不安が深刻な影響に

つまり、不平等な社会での生活が、私たちの考え方や感じ方、人間関係などにどのような影響を与えるかを明らかにしているのである。非常にしっかりとした考察がなされているのだが、なかでもとくに共感できたのは、人間にとっての「不安」に関する記述だった。

今日の先進国社会では、「自分が他人の目にどのように映り、どのように判断されているか」に関する不安(心理学者が“社会的評価の脅威”と呼ぶもの)が、生活の質や満足度に深刻な影響を与えていると著者は指摘する。

その具体的な症状としては、精神的ストレス、不安感、うつ病の増加、体調の悪化、アルコール飲料や薬物への依存、あるいは地域社会の衰退が挙げられる。

地域社会での交流が希薄になったために、自宅に引きこもり孤独を感じる人が増えるようになった。こうした精神的なストレスは、社会生活に生じる悪性腫瘍のようなものである。しかしこの問題が生活の質を議論するうえで注目されることはほとんどなかった。(19ページより)
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