なぜ若者は保守化するのか 反転する現実と願望 山田昌弘著
若者をめぐる議論は一面的な先入観に左右されがちである。『週刊東洋経済』の連載コラム38編を主体に構成された本書はそうした欠点是正への手掛かりという意味合いからも、示唆に富んでいる。
実際、その論点はしばしば産官学の通説とはかなり隔たっているが、いずれも説得力十分だ。最も重要なのは若者が変わってしまったのではなく、若者を取り巻く社会状況が激変しているのに、若者がのびのびと努力し、その結果として能力を発揮できる仕組みになっていないことにある、という指摘だろう。
俗説に従えば的外れの対応策しか出てこないのだから、事態は深刻化するばかりである。オランダはじめヨーロッパの事例も紹介されているが、なぜ日本はこれに学ぼうとしないのだろうか。
読み物的にも面白い話題が多く、若者の生態学とでもいうか、憎めないがちょっと寂しい若者像が浮かび上がる。若者を見る著者の目は厳しくもありながら基本的には温かい。(純)
東洋経済新報社 1575円
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