コロナで会えない「田舎の親」今心配すべきこと 激変している親の生活をもっと想像すべきだ

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「Go To Eatキャンペーン」もスタートしたが、外食をすることでストレス解消になるという高齢者も多い。自粛生活で家での食事が当たり前になったが、美味しいものを食べたいという意欲が低下していることも考えられる。

「どうせ外食するのなら、食べることだけではなく、脳活性化の効果を3倍にしてあげる。例えば前日に今度どこに行こうかとかプランニングをして、実際に食べに行く。そして帰ってからは、味がどうだったかと楽しく話し合うことがいいですね。そうすれば食べるという行動が3倍、脳の活性化につながっていきます。オール・オア・ナッシングではなく、1つの行動をどのように発展させていくかということです」(新井先生)

認知症の進行と回復、その決定的な分かれ道は

認知症の一歩手前の状態は「軽度認知障害(MCI)」と呼ばれている。物忘れのような記憶障害が出るが症状は軽く、正常と認知症の中間のような状態だ。2012年時点で65歳以上の約462万人が認知症、MCIが約400万人で、合わせると65歳以上の約4人に1人が認知症あるいは予備群だという。MCIの人は5年以内に50%が認知症に進行し、また回復する人も10%から15%いるとのことだが、この決定的な分かれ道はどこにあるのだろうか。

「一番大事なことは、生活習慣病がある人はそれをきちっと治療することです。高血圧、糖尿病、コレステロール血症などを持っていると、動脈や神経細胞を痛めつけるので、認知症に進行しやすい。完全に治ることはなくても、薬を飲んで普通の人と同じように生活ができればいい、寛解状態になることが大事ですね。それが結果的には認知症の予防になり、発症を遅らせるという2次予防につながります。

それから食事と運動と睡眠は大切です。睡眠は6時間半から7時間とらないと脳にアミロイドがたまってしまうんですね。しかし、この疫学的研究では、8時間以上の寝すぎも認知症になりやすいとの結果もあるので、要注意です」(新井先生)

もし認知症になってしまった場合でも、進行を遅らせるために、生活習慣病を見直すと症状が軽くなるという。現在のところアルツハイマー病を根本的に治す薬は開発されていないが、アメリカでは治療薬「アデュカヌマブ」が7月にFDAに申請を受理され、来年の春までには承認される可能性があるとのことだ。この治療薬はアルツハイマー型認知症の要因とされている「アミロイドβ蛋白」を減らす効果があるため、根治的治療が可能になるかもしれないと期待されている。

感染のリスクを犯してまで高齢の親に会いに行かなくても、できることはたくさんある。強制的に指示するのではなく、楽しみながらできる予防策を提案することが大事だ。正しい知識を持ってコミュニケーションを図れば、会えなくても高齢の親の認知症のリスクを軽減させることができるのだ。

草薙 厚子 ジャーナリスト・ノンフィクション作家

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くさなぎ あつこ / Atsuko Kusanagi

元法務省東京少年鑑別所法務教官。日本発達障害支援システム学会員。地方局アナウンサーを経て、通信社ブルームバーグL.P.に入社。テレビ部門でアンカー、ファイナンシャル・ニュース・デスクを務める。その後、フリーランスとして独立。現在は、社会問題、事件、ライフスタイル、介護問題、医療等の幅広いジャンルの記事を執筆。そのほか、講演活動やテレビ番組のコメンテーターとしても幅広く活躍中。著書に『少年A 矯正2500日全記録』『子どもが壊れる家』(ともに文藝春秋)、『本当は怖い不妊治療』(SB新書)などがある。

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