コロナで会えない「田舎の親」今心配すべきこと 激変している親の生活をもっと想像すべきだ

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4月には緊急事態宣言が出され、感染予防のためデイサービス等を一時休止する事業者が増加した。医療機関や高齢者施設も、入院患者への面会制限を行い、在宅でも民生委員やボランティアの家庭訪問の機会が減少したが、高齢者にはどのような影響があるのだろうか。

「人との交流や行動することは脳の活性化の中でいちばん大事で、それがなくなると脳の活動が低下してしまいます。昼と夜のリズムも変わってくるし、体も疲れない。食欲だってなくなるし便秘だって起こるかもしれない。デイサービスなどに行けば、誰でもあるようにいわゆる「外面」で頑張るからいいんです。人間には予備脳というものがあります。それは、普段は休んでいるが必要な際には働く脳機能の余力ことです。デイサービスに行くとその部分が頑張るわけです」(新井先生)

予備脳とは、主に思考や判断し行動する機能を司る「前頭葉」を中心にした脳の機能で、その機能が落ちてしまうと状況に適した行動ではなく、ゴーイングマイウエイになってしまうという。脳の活性化と体の維持、メンテナンスには、やはりデイサービスへ行ったり、ヘルパーさんが来て人と交流するということがとても大事なのだ。

認知症といっても、脳の一部にダメージがあるだけでほとんどは正常であり、予備脳はそのダメージのある部分をカバーしてくれる。しかし、家でじっとしているだけでは代償機能が働かず、認知症の症状が出やすくなるという。

「認知症は短期間で進むというものではなく、5年、10年とゆっくりと進んでいくものです。デイサービスに行かなくなって急に悪くなったというのは、病気が進行したのではなく、カバーする脳が働いていないということです。一時的に悪くなるのは表面的な症状ですから、回復する可能性も高いのでうまく対処すれば大丈夫です」

無理強いせず、できることをやらせる

新井平伊(あらい・へいい)/1984年順天堂大学大学院修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院精神・行動科学教授を経て、2019年よりアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。

デイサービスなどに通える環境が整っている場合はいいが、他人に感染させてしまうことを恐れ、1人で生活している高齢者も多い。そういった親をもつ家族は、具体的にどう対処すればよいのだろうか。

「よく勘違いされるのですが、必要なのは、計算ドリルをやれとか口うるさく言うことではありません。そこが間違いなんです。親にしてみれば面倒臭いし、言われたくない。ポイントは本人が楽しめるかどうかということです。できないことをやらせるのではなく、できることをやらせること。

できないことを毎回『やれやれ』って言われたら、心理的には毎回ハンマーで頭をガンガン殴られているようなものです。そのほうが脳のダメージが大きいのです。家族は心配のあまりつい言ってしまうのですが、それは逆効果です。いつまでも元気でいてほしいからと、愛情が伝わるように言うことが大事ですね」(新井先生)

計算ドリルやテレビゲームなどは、繰り返しの作業であるため、脳の同じ場所、しかも一部しか働かないという。それよりも相手がいて成立するゲーム、例えば将棋、麻雀、トランプなど、相手がどういう事を考えているのか推測したり、自分はどう対応するかなど、推理と判断が必要なゲームなら脳は活性化するという。

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