自宅で取材なんて不可能と思う人の大きな誤解 アメリカの調査報道はコロナ禍で激変した

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首都ワシントンDCの「NBC4テレビ」で調査報道を担当するジョーディ・フレイシャー記者は、国際会議のリモート画面の中で「コロナ禍で情報源を得る方法」と題して講演した。ピンチをチャンスに変える発想は市民だけでなく、ジャーナリストにも欠かせないという。

「記者も取材相手も同じ困難なコロナ禍にいて、自宅から仕事をしています。ということは、取材相手の携帯番号など、以前はなかなか入手できなかった情報が手に入るチャンスです。ステイ・アット・ホームの期間に取材をした分だけ、取材相手の携帯番号が手に入るし、コロナが収束した後もずっと役に立つでしょう」

オレゴン州ポートランドを拠点とする「KGWテレビ」の調査報道担当、カイル・イボシ記者も同じ講演に登壇し、次のように語った。

SNS投稿をきっかけに情報を集めるスタイルも

「コロナ禍で情報源を見つけるのに最適なツールはSNS。私自身、ツイッターやフェイスブックに『この問題で困っている当事者を探しています』などと投稿して情報を集めています」

日本のマスメディアでは長い間、記者の基本は足で稼ぐことだと言われてきた。SNSを使って楽に情報源を集めることには今も少なからず抵抗感がある。しかし、アメリカは違う。この国際会議も含めて、アメリカ内のイベントはほぼすべてオンラインに切り替わっており、アメリカの取材者にはSNSを使った取材手法が定番になったのだ。

KGWテレビの調査報道担当、カイル・イボシ記者(撮影:大矢英代)

イボシ記者は、今こそ自分の専門分野の外に目を向けるチャンスであり、世界中のオンライン会議やイベントに参加すべきだという。

「会議は情報源の宝庫です。講師を見れば、その分野の最前線にいる人たちが誰なのかを理解できるし、登壇者リストを保存しておけば今後の取材にも役に立ちます」

SNSで取材の端緒を探し、協力を呼びかけ、情報を集める。オンラインのイベントに積極参加し、知見を増やしていく──。こうした取材手法が有効なら、日本でも「自宅での調査報道」は十分に可能だろう。しかも、プロの取材者だけでなく、世の中の動きに関心を持つ市民なら、誰でもそこに飛び込むことができそうだ。

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