「MX-30」が従来のマツダ車と決定的に違う理由 クルマ好きじゃないユーザーを狙った味付けに

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このように早々と受注を開始するいちばんの理由は、生産計画を立てやすいからだ。納車の3カ月前から受注を始めると、早い段階で売れ筋のグレードやオプション装備が明確となり、部品を製造するメーカーへの発注も行いやすい。発売されたときには、大量の受注がたまっているため、生産と納車も効率良く開始できる。

さらに「発売後1カ月の受注台数が2万台」という具合に、人気の高さを誇る宣伝材料にも使うことができる。実際にはもっと長期間にわたり受注しているのだが、受注台数は発売日を起点にして公表されることになる。

その代わり、最も尊重されるべきユーザーと販売店が迷惑を被ることになっていた。実車のない状態で商談を行い、長期間の納車待ちも我慢せねばならないのだ。

発売後に試乗まで行って契約すれば、納期がさらに遅れることになる。ユーザーはリスクを覚悟で実車を見ずに契約するか、それとも納得して買う代わりに納期を長引かせるかという二者択一を迫られるのだ。

これで、大量の受注台数を誇っていいのだろうか。本来、誇れるのは受注ではなく、ユーザーに納車した実績を伴う登録(軽自動車は届け出)台数である。

こういった受注の前倒しはマツダに限った話ではなく、他メーカーにも当てはまる。例えば新型SUBARU「レヴォーグ」は、2020年8月20日に先行予約を開始して、10月15日に報道発表を行い、11月26日に納車を伴う発売に至る。各メーカーともに、ユーザーを平気で待たせるようになっているのだ。

MX-30で是正された売り方

そしてマツダやSUBARUは、走りの良さや上質な内装をセールスポイントに挙げているのだが、これらは実際に車両を見たり運転したりしないとわからない。

また新型CX-5やレヴォーグの車内の広さなどは、先代型とさほど変わりはない。そうなると従来型のユーザーは、走りや質感の進化次第で、新型に乗り替えるか現行型を使い続けるかを判断するため、試乗は不可欠。受注の前倒しのメリットを感じられない。

ところがMX-30では、この売り方が是正された。販売店は以下のように説明する。「MX-30では、今までに比べて受注の前倒し期間が短くなりました。受注開始は2020年9月下旬で、発表は10月8日です。納期は現時点(10月上旬)の注文で11月下旬なので、発表後に延びる可能性はあるものの、極端には長くはありません。試乗車はすでに配車されており、発表日の10月8日から試乗していただけます。販売しやすくなりました」。

以前に比べると、売り方が良心的になっている。開発者に尋ねると「以前の、実車を見ないで商談する方法は、お客様と販売店に無理を強いていました。評判も悪かったので、新車の発売スケジュールを改めました」と述べている。

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