これらの特徴を持たせながら、外観に引き締まった存在感を与えるために、天井とサイドウインドウの上側を後方に向けて下降させたのだ。
そうなると後席のドアは開口部が狭まり、同乗者は頭を下げて乗り降りせねばならない。乗降性の悪化を改善するために観音開きのドアを採用し、後席の乗員が天井の高い部分を通れるようにした。
今後のマツダ車は、CX-30のような従来の魂動デザインと、MX-30から始まる新しいデザインの2本立てで発展するだろう。そうすることで、今までマツダが集客できなかったクルマ好きとはいえないユーザーにも受け入れられ、男性中心の売れ方も是正されるなど、顧客の幅が広がり、売れ行きを伸ばす余地が生まれるのだ。
従ってMX-30のニュースバリューは、MX-30自体よりも、このクルマから始まる新しいマツダの商品戦略にある。獲物を追いかけるチーターからイメージを膨らませた魂動デザインでは、背の高いクルマでもSUVが限界だ。そのためにかつてマツダが展開していたミニバンの「プレマシー」、ハイトワゴンの「ベリーサ」などは廃止された。
しかしMX-30の路線なら、外観が水平基調でシンプルなため、空間効率を重視した車種とも親和性が高く、子育て世代が求める車内の広いコンパクトなハイトワゴンも開発できるだろう。
マツダにはカッコ良くて走りの楽しいクルマを徹底的に追求してほしい気もするが、生き残るためにはそうもいかないというのが現実だ。
2016~17年頃にはクルマ造りが硬直化
MX-30の流れに沿った新しい路線に加え、車内の広いクルマも復活させる。この動きは、率直にいうと、時期が遅かったと思う。
CX-5が現行型にフルモデルチェンジした2016年から2017年頃には、すでにマツダのクルマ造りは硬直化しており、似通ったクルマをそろえていたからだ。
この点を開発者に尋ねると「新世代プラットフォームを2019年に登場したマツダ3から採用する計画があり、それ以前にMX-30を導入することはできなかった」とコメントした。
またMX-30では、従来のマツダ車に比べて売り方にも変化が見られる。
近年のマツダ車は、発売日から大幅に早く予約受注を開始している。例えば現行CX-5の発売は2017年2月(報道発表は2016年12月)だが、販売店の予約受注は2016年11月に開始されていた。
この時点で販売店からは「展示車も見られず、資料だけで商談しているため、お客様に十分な説明を行えない」という声が聞かれた。
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