「ヤリスクロス」と「キックス」は何が違うのか 欧州と新興国、狙う市場が異なる2車の全容

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日本では、以前からミニバンやハイトワゴンなど、空間効率に長けた車種が人気だったので、運転のしやすさや車内の使いやすさをSUVの長所と考える人が多い。5ナンバーサイズでスクエアなキャビンを持つライズがヒットしたのは、ある意味当然といえる。

それでも、キックスはライズに比べると、前後フェンダーの張り出し、前傾姿勢を強調するサイドのキャラクターライン、斜めの線を多用したリアビューなどにより躍動感を表現していて、グローバルモデルらしさを感じる。

キックスはリヤから見るとより前傾姿勢が強調されて見える(筆者撮影)

とはいえ、顔つきは上下2分割の薄いグリルを据えたヤリスクロスのほうが精悍だし、キャビンまわりをぐっと絞り込んだ形状のおかげで、タイヤの踏ん張り感も上だ。

インテリアデザインを比較すると、ヤリスクロスは、センターコンソールまわりを強調していることを除けば、ハッチバックのヤリスに近い。キックスのインテリアは、新興国向けに生まれたというストーリーから想像するより、クオリティは高いといえる。

スクエアなキャビン形状のため、車両の見切りがいいのも、キックスの美点だ。ただし、2種類あるインテリアカラーのうちオレンジは彩度が強めで、ヤリスクロスのブラウンのほうが落ち着きがあって、日本人受けしそうだった。

広さは見た目から想像するとおりで、キックスが上。とりわけリアは、ドアの開口部が大きく、中に入れば身長170cmの人でも足が組める。荷室容積は、ヤリスクロスの390Lも立派だが、キックスは423Lとさらに上をいく。

バリエーションが多いヤリスクロス

パワートレインは、キックスが1.2リッター3気筒ガソリンエンジンで発電した電気で走るe-POWERのみなのに対し、ヤリスクロスは1.5リッター3気筒ガソリンのほか、これにモーターを組み合わせたハイブリッド車もある。

ヤリスクロスのリヤまわり。キャビンがキックスより小さく見える(筆者撮影)

駆動方式もキックスは前輪駆動しかないが、ヤリスクロスはガソリン車、ハイブリッド車ともに4WDが選択でき、このクラスのSUVでは珍しいオフロードモードセレクターも備えて、多少の悪路なら走破できることをアピールしている。

前述のようにトヨタにはライズやC-HRもあるから、選択肢の少ない日産よりもアドバンテージは大きい。一方で、キックスはライズに匹敵する実用性の高さ、e-POWER独特の静かで滑らかな走り、ヤリスクロスのハイブリッド車に匹敵する経済性を併せ持っており、トヨタのラインナップにはないキャラクターを持つコンパクトSUVということもできる。

いずれにしても、ユーザーにとってコンパクトSUVの選択肢が増えたことは間違いない。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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