どちらも海外を発表の場に選んでいるが、ジュークはヨーロッパ、キックスはブラジルやタイといった新興国であることが違う。さらにキックスは、北米や中国でも販売しており、日産のコンパクトSUVの主役は今やこちらではないかと感じる。
ヤリスクロスは今年4月にオンライン発表されたが、これは新型コロナウイルスの影響であり、本来は3月開催のジュネーブモーターショーでのお披露目を予定していた。そのことからも、ジューク同様、ヨーロッパがメインマーケットの車種だとわかる。
対するライズは、ダイハツが昨年秋の東京モーターショーで「新型コンパクトSUV」として展示し、モーターショー終了翌日の11月5日に発売した「ロッキー」の兄弟車で、ロッキーと同日に発売した。現時点では、海外展開はない。
新興国の1つインドでは今年9月、スズキが現地で生産販売している「ビターラブレッツァ」のOEMである「アーバンクルーザー」を発売した。北米や中国はひとまわり大柄な「C-HR」を最小としている。
このように日産とは違う取り組み方をしている地域も多く、2車種のコンパクトSUVを用意する日本市場もその1つであるが、ヨーロッパ向けを1車種用意している点は共通しているのである。
車両比較で見るターゲットの違い
ヨーロッパをメインマーケットにしたヤリスクロスとジュークは、パッケージングやスタイリングの方向性も似ている。
2010年にデビューした初代ジュークのコンセプトは、「SUV+コンパクトスポーツカー」で、そのフォルムはたくましい下半身とクーペのような上半身の融合を目指した。その後、多くのブランドからクーペスタイルのSUVが登場したが、そのきっかけがジュークのヒットにあったことは間違いない。
もちろん、現行ジュークもこの路線を受け継いでいる。C-HRやヤリスクロスの方向性も、ジュークに近い。
カーデザインにダイナミックでエモーショナルな雰囲気を与えるこの方向性は、平均速度が高く、走る楽しさを多くの人が理解するヨーロッパらしいものだ。
同じくヨーロッパ市場を重視して開発されたハッチバックのヤリスも、ダイナミックな造形としている。日産がヨーロッパで展開する「マイクラ」も、国内で主流となっている「ノート」とは異なり、この路線だ。
対する新興国では、最近になって自動車が庶民に広まった状況で、その中でSUVブームがやってきた。多くのユーザーが、背の高いボディの使いやすさに感心したのだ。つまり、SUVに実用性を期待するユーザーが多くなった。キックスは、こうした需要に合わせたSUVだといえる。
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