「民間部門の過剰貯蓄」でアメリカ経済も停滞へ ISバランスから読み解くアフターコロナの経済

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また、9月17日の『現在のマネー膨張は「インフレの芽」なのか』では各国のマネーサプライ(日本はマネーストック)統計が現金や準通貨(要するに預金)を主軸として急増していることを指摘。これが将来の「インフレの芽」になる可能性はあるのかという問題提起を行った。そして、その結論としては、予備的動機に基づいて備蓄された類のマネーはそのまま退蔵され、消費・投資意欲が焚き付けられることはないと論じた。

上述してきたISバランスにおける「民間部門の貯蓄過剰」も基本的には同じ現象を指しているだけだ。家計部門の貯蓄超過に前向きな意味を見出すのは難しいのは周知のとおりである。「マネーサプライの急増」というと威勢のよい話に聞こえるが、民間部門の過剰な貯蓄は、要するに、家計や企業の「消費・投資意欲減退」といえば、悲観的な話に聞こえてくるはずだ。

「使えない」から「使わない」へ?

ラフに言えば、今、実体経済で増えているマネー(ISバランスで言えば貯蓄)は行動制限によって「使いたくても使えなかったお金」と、感染症を背景として「不安だから取っておきたいお金」の2種類に分けられると考えられる。4月以降に見られている異様なマネーそして貯蓄の増加は前者に起因するものも小さくないだろうが、今後は後者に起因する動きも無視できないものになってくると筆者は懸念している。

実体経済に存在しても抱え込まれているだけで死蔵されていく貯蓄が増えれば、必然的に景気は低体温(低物価)が定着する展開に陥る。「悲観の極み」であった4~6月期を越えて、日米欧は7~9月期以降、その低体温状態から抜け出せるかどうかが注目点となる。
 

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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