北京に住む日本人が見た中国政府のコロナ対応 「未知の事態」への対応は遅すぎるものだった

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人民代表大会が閉幕すると、まるでそれを待っていたかのように新型コロナウイルスが牙を剥く。18日に3人目の死者、19日に4人目の死者、20日は新たに2人が死亡した。

20日の午後には、国家衛生健康委員会の高級専門家グループのリーダー鐘南山氏が、記者会見で 「人から人への感染があることがすでに確認された」と明かした。その様子が中国メディアで流れ、国内では新型コロナウイルスが人から人へ感染する事実が初めて広く共有されるようになった。20日はさらに国内では武漢以外で初めて、首都北京や広東省でも感染が確認された。

ここまで来て、習近平国家主席がやっと❝重要指示❞を出す。「絶対に感染症の蔓延の勢いを食い止めなくてはならない」と発破をかけた。

これを受け武漢市では、医療態勢や交通、宣伝など関係部門を統一的に指示するために、周先旺市長をリーダーとする防疫指揮部を立ち上げた。だが時すでに遅し。武漢では20日の24時までに死者はすでに6人、感染者は258人にまで膨れ上がっていた。武漢は習近平主席の重要指示から3日後、封鎖された。

未知の事態でも対応は遅かった

このように、未知の事態に直面した中国は当初、何もしなかった。いや、正確に言えば、春節(旧暦の新年。今年は1月25日)の浮かれ気分に包まれており、進行する深刻な事態に敢えて目を向けようとしなかったのだ。

毎年の大晦日、国営の中国中央テレビは、習近平国家主席が執務室に座って国民に向けて述べる新年の祝辞を放送する。武漢市が「原因不明の肺炎の発生」を発表したのは、2019年のその大晦日だった。

しかし、習主席の祝辞の中には、未知の病の危険に晒された武漢市民への気遣いも、すでに確認されていた感染者に対する見舞いの言葉もなかった。国営メディアを通じて示された最高指導者の無関心は、国民に「ああ、大したことはないのだ」と思わせるのに十分すぎる効果があった。

それから3週間後、新型コロナウイルスの脅威に覚醒した中国が見せたのは、パニックだった。官僚が記者会見で失態を演じたり、地方官僚が中央を批判するかのような発言を公然としたり。非合理に思える対策も、朝令暮改もあった。

中国は、ウイルスを抑え込むために人を抑え込んだ。外国人の私でさえ例外ではない。自宅を出入りするのにも通行証の提示を求められる。人の家に行けないし、自宅に人も呼べない。行きたい場所が見えていても、検問で止められてその先に進めない。

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