北京に住む日本人が見た中国政府のコロナ対応 「未知の事態」への対応は遅すぎるものだった

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中国中部、長江の中流域に広がる湖北省は6000万近い人口を擁する。武漢はその省都、日本風に言えば県庁所在地である。省都・武漢では、新型コロナウイルスの感染が徐々に広がり、すでに最初の死者が出ていたが、湖北省の人民代表大会、日本風に言えば地方議会が1月12日に開幕した。

市内中心部にあり、会場となった洪山礼堂の内部には、前よりも後ろが高くなるように設置された固定式の座席が扇型に広がっている。大学の講堂のような造りだ。

その階段状の座席に省内から集まった代表たちが隙間なく「密」な状態で座り、一番前のステージ上に座る省のトップたちに向き合った。予定通り6日間の日程を17日に終えると、一堂に会した約700人の代表たちは、感染の❝震源地❞となるこの都市から、省内各地の地元へ散って行ったのだった。

大会開催期間中は増えなかった

武漢市の衛生健康委員会の発表を手繰ると、人民代表大会が開幕する前日の11日から15日まで新たな感染者は増えていない。16日に新たに4人、閉幕日の17日には一気に17人が感染確認され、トータルの感染者数が62人に上っていたが、その事実が明かされたのは閉幕後だった。つまり、大会の開催期間中、武漢で感染者は❝増えなかった❞。

なぜ、開幕前日から前半までは感染者が出ない幸運に恵まれたり、後半に増加した感染者の公表に日を要したりしたのか。それは、おそらく偶然ではないからだ。

湖北省など地方の人民代表大会での決定事項は、北京で開催される全国人民代表大会(全人代)で報告される。全人代とは、日本で言えば国会だ。2020年の全人代は新型コロナウイルスの影響で異例の開催延期となるのだが、この時点では例年通り3月初頭の開幕予定だった。

湖北省としては中国の1年で最大の政治イベントである全人代の前に、地方議会を終えておく必要がある。この間の感染者数が増えなかったのは、議事進行への影響を恐れ、あえて公表しなかったからではないだろうか。

歌を雄壮に斉唱し、「勝利の閉幕を迎えた」と地元の機関紙が持ち上げた閉幕式で、省のトップ蒋超良党委書記は、美辞麗句を駆使し演説したが、新型コロナウイルスについては一言も触れなかった。

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