「児童虐待」の裏側に潜む母親の深刻な精神疾患 乳児に他人の血液を口に含ませた事件も発生

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ところが、それでも効果がないと母親は訴えてきました。私は主治医として親身になっていくにつれ、薬の量を増やしたのですが、次第に疑いを抱くようになりました。最終的に児童相談所が介入し、女児は施設に引き取られました。母親から離れたその日の夜から女児はすやすやと眠って、母親の虚言だったと発覚したのです」

父親は仕事ばかりで、ほとんど家庭を顧みなかったという背景もあった。献身的な母親をしている姿を見てもらうために、うそをついて関心を引きたかったのだろう、という。

「一見して、うそだとは思えない女優のような演技をする親が多く、母子分離をして子どもの様子を観察しないと発覚されにくいのです。小児科医をしていれば一度は出会うほど、潜在的には多いと思います」(友田教授)

「真剣に考えてくれる人が身近にいる」経験が必要

心の病によって母親が子どもを病気に仕立てる不幸な事例を防ぐには、どうしたらいいのだろうか。

『赤ちゃんが大人になる道筋と育て直し―三つ子の魂、乳幼児体験の大切さ―』の著者で臨床心理士の角田春高さんは、こうした母親の内面を探り、理解することの重要性を語る。

「母親は、孤独感と孤立感にさいなまれているがゆえに、子どもを陰で痛めつけてその子どもを世話するよき母親として関心を寄せてもらい、同情を集めているのだと思います。私が相談を受けるときには、母親が頼りにしている人を核に据えて、その人が母親の内面に耳を傾け、理解してあげるように努めてもらいます。自分は1人ではない、真剣に考えてくれる人が身近にいるのだと安心できる経験が必要です」

2010年には、入院していた幼い3人の娘の点滴に水などを混入して、1人を死亡、2人を重症にさせたとして「代理ミュンヒハウゼン症候群」と診断された母親が傷害致死の罪に問われ、懲役10年が言い渡される事件があった。

保護者による子どもの虐待で「代理ミュンヒハウゼン症候群」が疑われる事例があるときは、最悪の事態を招く前に専門家の診断を受けて、精神的なケアが求められる。

(本誌・岩下明日香)

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