在宅勤務でかえって疲弊する人々の密かな苦痛 メリット大きいが業務過多や心を病むケースも
多くの政府や企業がこうした法的制度や指針を作るのは、それだけ自発的に行うのが難しいものだからである。韓国では2018年12月、公務員のパワハラ行為の概念と類型を具体化した改正公務員行動綱領が施行された。それによれば、「休日や昼夜を問わずSNSで傘下機関に業務の指示や強要をすること」もパワハラとして公務員の懲戒事由になる。
2019年7月16日には「職場内嫌がらせ防止法」(改正労働基準法)が施行された。職場内での地位や関係の優位性を利用して業務の適正範囲を超えた身体的・精神的苦痛を与えたり、勤務環境を悪化させたりする行為は全て違法となったのだ。
休日にカカオトーク〔無料通話・メッセンジャーアプリ〕で過度な業務指示をしたり、暴言を吐いたりすることも嫌がらせに当たる。韓国では「つながらない権利」自体を法制化したわけではないが、明確にその権利を含む法制は一部に存在するわけである。これは今後テレワークや在宅勤務が拡大するにあたって、一層重要になる法律だ。
テレワークが孤独感や疎外感といったメンタルヘルスの問題を招きかねないという指摘はいまだにある。テレワークの拡張は、ただでさえメンタルヘルスの問題を抱えがちな現代人に負の影響を与えかねないというのだ。そのため企業側は今後、社員がテレワークで疎外感や孤立感をおぼえた場合の解消法の模索にも注力しなければならない。
バラ色の幻想を抱いてはならない
テレワークのためにサポートすべきことはITソリューションだけではない。テレワークは、働き方だけではなく生き方全般をも変える。それゆえ、安易に考えたり、バラ色の幻想を抱いたりしてはならないのだ。文化の変化でもあるため、適応と問題改善のための時間及び、そのための投資も必要になってくる。
ちなみにビル&メリンダ・ゲイツ財団が設立した、世界の保健統計と影響を評価・研究する団体「IHME」(Institute for Health Metrics and Evaluation)によると、メンタルヘルス障害を経験した人は2017年現在、世界中に約7億9900万人いると推定される。世界の人口の10.7%、つまり10人に1人がメンタルヘルス障害を経験したということだ。
就業人口でみると、約15%がメンタルヘルス障害を経験していると推定される。WHOの国際疾病分類ICD−10に従って広義に定義すると、うつ病、不安障害、双極性障害、摂食障害、統合失調症などが含まれる。
ソーシャルメディアマネージメントプラットフォーム「バッファー」(Buffer)は、テレワーク制度拡張のリーディングカンパニーとして、様々な調査を行っている。アンケート調査の結果によると、回答者の19%がテレワークによって孤独を感じ、17%がコミュニケーションに不便を感じたそうだ。
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