追い込まれる生コン産業、「コンクリートから人へ」でいよいよピンチ! 全国工場3割削減へ
削減策で先行する大阪 廃業を資金供与で支援
簡単に言えば、高い販売シェアを持つ事業者が既得権の一部を、不満を持つ事業者に与えることで、協同組合を再建したということになる。ただし、それでも安泰ではない。広島市の関係者が嘆く。「価格は上がったが、需要は激減している、この1月の出荷量は経験したことのない少なさ。これが続くと協同組合の結束にひびが入る」。
大阪広域生コンクリート協同組合は、全国生コンが構造改善の「先進地区」(吉田会長)と期待している協同組合だ。大阪広域では93社、106工場が加盟しており、年商は約650億円。「日本一大きい協同組合」(安田泰彦理事長)である。
大阪は戦闘的なミキサー車運転手の労働組合(連帯ユニオン関西生コン支部)があるために、他の地区より生コン搬送費が高いという地域特性がある。「関東の生コン運転手の平均年収は450万円だが、関西は800万円。原価が高い分、生コン価格も高い」(安田理事長)という。大阪広域は生コン工場の約30%弱削減に先駆して取り組んでいる。
その方式は、販売シェア0・1%に対して約6000万円の設備廃棄資金を事業者に渡すというもの。事業者は、その資金で廃棄費用や従業員の退職金などを支払う。30%弱の生産能力を削減するのに150億円程度かかるという。大阪広域ではこの資金を内部留保と商工中金からの借り入れで調達する。
「4月にJISが改正され、生コン品質の規制が強化される方向にある。規制をクリアするには新たな設備投資も必要だ。こうした前途を考えると今廃業したほうが得、と考える事業者も増えている。削減の目標は達成できそうだ」(安田理事長)。
廃業資金を与える事業者からは、今後は生コン事業に再参入しないという「念書」をもらう。過去の構造改善で、廃業したはずの事業者が環境が好転すると再参入し、工場数が構造改善前より増えたという苦い経験があるからだ。工場が減ることで残った工場稼働率は上がり、利益も上がる。その資金で商工中金からの借り入れを返済するスキームだ。
4月以降、品質基準規制が強化される一方、セメント会社は従来の商慣行を清算して、「契約書どおりきちんとコストアップ分を値上げしていく」(大手セメント会社役員)。両者に挟まれて、生コンの統廃合は待ったなしの段階に入った。
(内田通夫 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)
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