「DVが殴る蹴るだけ」だと思う人の大いなる誤解 世代間で連鎖する「自覚なき加害者」の奥底

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

山本さんは52回のプログラムを終え、別居開始から5年後に家に戻ることができた。「今では妻と仲良しですし、怒ることもなくなりました」。しかし、今でも月に1~2回は「ステップ」に通う。

「52回が終わったとき、自分の根っこにあるものはまだ変わっていないというか、もう大丈夫だって思えなかったんです。ステップに通い始めて6年が経ちますが、今でも毎回気づきがあります」

山本さん(撮影:ニシブマリエ)

生理反応と感情は変えられないが、思考と行為は変えられる。「ステップ」では、それを学んだという。さらに信頼関係を深めるための「身につけたい7つの習慣」も。傾聴する、支援する、励ます、尊敬する、信頼する、受容する、意見の違いを交渉するという7つだ。山本さんはとくに「傾聴」を極めることを目標にしているという。

怒ってしまうことへの不安はもうないのかと尋ねると、山本さんは「怒ることはありません」と断言した。

「なぜなら、怒らないと決めたからです。万一、怒ってしまったら謝る。怒ってしまうかもしれないと恐れるより、怒らない自分を考える。覚悟を決めた、とでも言いますか。怒りは感情だから仕方ないって自分を許していると、怒れちゃうので。それでも、心がざわざわすることはあるんです。そんなときこそ、マイ・テーマである『傾聴』を思い出します。人の話って、ちゃんと聴けば聴くほど怒る暇がないんですよ。怒ってしまうなら、それは相手より自分に集中しているからだと思いますね」

脳の細胞が入れ替わったみたいに変わった

妻から面と向かって「変わったね」と言われたことはない。それでも、妻は「脳の細胞が入れ替わったみたいに変わりました」と栗原さんに伝えていたことを間接的に聞いた。

変わったと決めるのは自分じゃない――山本さんはそう自戒しつつも、足取りは軽そうだ。

「人生って、ほとんど人間関係でできているじゃないですか。だから、ステップで学んだことは家族も仕事もすべてにいい影響をもたらしています。学び続けることで、これから死ぬまで人を傷つけることなく生きられると思うと、そんな最高なことないですよ」

(取材:ニシブマリエ=フリーライター)

Frontline Press

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事