「3つのバブル」が崩壊する瞬間が近づいている 短期のコロナバブル崩壊はきっかけに過ぎない

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そこで3つ目のバブルである「長期バブル」の登場である。これからは、この長期バブルの崩壊となるかどうかにかかっている。

ここで長期バブルの循環とは、経済システムの循環であり、現在の長期バブルは、1492年以降の、世界の流動化以来始まった、近代資本主義というバブルである。

それ以前、欧州は、中世という固定化された世界のシステムで動いていた。それが大航海時代により流動化が始まり、「新世界」の発見という外部の登場、フロンティアの拡大、そして収奪などによる富の流入により、バブルが膨らみ始めたのである。

近代資本主義は、ひたすら、流動化を進めた経済社会システムであった。階級の流動化も起こり、宗教革命により権威の流動化も起こり、例えば貴族も流動化した。

また資本も流動化し、それを蓄積し、拡大、増殖し続けようとする資本家が誕生した。その資本家も流動化し、分散化、大衆化し、資本は株式となり分割され、さらにそれは上場して分散し、極端に流動化された。そして、資本の移動速度は加速度的に速まり、人の移動も、社会の変化も、資本の戦いの勝負もスピードも速まり、栄枯盛衰の展開も加速した。そして、バブルは頻繁に短期に激しく起こるようになった。

「新しい中世」とも呼べる時代が到来するか

この長期のバブルが、ついに今回で終焉する可能性が、僅かだが、あるかもしれない。加速がこれ以上起きようがない、流動化がこれ以上起きようがないかもしれないからだ。

実際、政治権力よりも大企業の権力が強くなったが、企業は、その権力とビジネスモデルを、プラットフォームという言葉に示されるように、固定化しようとして、競争を激しく行っている。皆が固定化を目指すようになりつつある。流動化が限界を超えたとすると、これは近代資本主義という流動化の時代が終わり「新しい中世」とも呼べるような、固定化の時代、蓄積の時代が始まるかもしれない。

グローバル化が進み、外部が存在しなくなり、フロンティアも存在しなくなったことも決定的だ。長期バブル、近代資本主義が終わる可能性が見えて来てはいる。だが、新たな覇権国家を目指す中国が外部であり、外部になり、旧来からの欧米の覇権国家群を助け、新しい覇者となり、近代資本主義を延長する可能性もないわけではない。ただ、それがそもそも可能であるか危ういし、中国の意思が持続するかどうかもわからない。

したがって、第3のバブルである長期バブルが終わるかどうかは、現時点ではわからない。

しかし、その前の中期バブルが崩壊し、一定期間、激しい変化と流動化の時代から、違ったペースと様相の時代が来ることは間違いない。その”ミニ”新しい中世がどんなものになるか、今後、考察をする必要がある。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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