日米ともに、中央銀行は今、大きな岐路に立たされている。
その理由は3つだ。
第1に、現在の金融政策は、政権トップの意向を大きく反映したものであり、そのトップが日米で変わる可能性があるからだ。
第2に、もともと歴史的に見れば異常な規模の金融緩和をしていたところへ、新型コロナショックが起きたことで、異常な規模から「異常に異常な規模の緩和」へ一気に拡大した。そして、ショックが落ち着きはじめたこのタイミングは、本来は緩和規模縮小への転換点になるはずであるからである。
第3には、コロナや政治トップの交代とは無関係に、金融政策自体が大きな長期的な転換点にさしかっていたからだ。この転換は、もっと前に起きても、あるいは今である必然性もなかった。だが、コロナショックと特殊な政治リーダーの交代というタイミングが重なったことで、今の意味が大きくなった。
それによって、いやでも分岐点に立たされてしまったのだ。この第3の点については長くなるため、今回は省略し、ポイントを絞って議論しよう。
パウエル講演はどこが「驚愕の内容」だったのか
安倍晋三首相の辞任の話題にかき消された面もあるが、毎年恒例の中央銀行関係者によるアメリカのジャクソンホール会合(8月27-28日、カンザスシティ連銀主催)は、ほとんど話題にならなかった。
しかし、実は、ジェローム・パウエルFRB(同国の中央銀行)議長の講演は、驚愕の内容だった。
まず、FRBの基本方針文書の改訂を発表した。普通はそのような実務的な話は、正式のFOMC(米公開市場委員会)会合だけで行う。ジャクソンホールでは、その会議の趣旨や雰囲気に合わせて、アカデミックかつ長期的な視点から理念的に示唆に富むものを話すのが通常である。
2010年、ベン・バーナンキ議長(当時)が金融政策の方針変更を示唆したことから、この会合はその後一気に、毎夏メディアとマーケットの注目を集めるようになった。だが、そんな「事件」があったのは、あの時だけだ。しかも、当時もアカデミックなかつ大きな話をする中での示唆だった。今回のように、現実の政策変更の正式発表をそのまま行うのは、ジャクソンホールでは初めてのことだ。
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