「国民に甘くない令和おじさん」は案外悪くない おぼっちゃまよりも「市場にはいい人」かも

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菅首相は総裁選の期間を通じて「秋田の農家の長男」「代議士秘書の後、(横浜)市議を経ての、『叩き上げの』政治家」というイメージを訴えた。確かに、「鞄(に入ったお金)、看板(知名度)、地盤(選挙区と支持者)」の3つ「バン」が必要だと言われて久しい現在の政治ビジネスにあって、政治家2世ではない菅首相の経歴は異色だ。

それでは、近年数が多い政治家2代目、3代目、4代目の「おぼっちゃま」政治家と、菅首相のような「叩き上げ」政治家とでは、国民としてはどちらがいいのだろうか。あるいは、わが身に近づけてみるとして、サラリーマンなら、どちらのタイプの上司がいいか。

「叩き上げ」の政治家・上司のほうが、庶民や部下の感情がわかっていいのではないかと即断しそうだが、比較はそう簡単ではない。

「菅タイプ」はついていって、頼りになる

一般に、「叩き上げ」で偉くなった人は、自分が努力の結果競争を勝ち抜いて今日の立場を得ているので、「努力」や「競争」に対して肯定的であり、うまくいかない人を「努力不足」だと見なす傾向がある。つまり、「自助」が第1の価値観なのだ。

また、叩き上げタイプは、過去の競争の過程で騙されたり負かされたりしていることがあるし、他人から見下された経験もある場合が多い。こうした経験があると、人は性格がひねくれるし、少なくとも他人を簡単には信用しない猜疑心を持つようになる。

他方「おぼっちゃま」は、深刻な競争の経験がなかったり、努力こそが成功への道になる体験を持っていなかったりするので、「努力して、勝つ」のが人生の王道だという実感が乏しい。

一方、人生でひどい目に遭うことが少なかったので、年齢の割に純粋で素直な人が多い。直接会ってみると、明るくて、華がある。ただし、他人に対する我慢の経験が乏しいから、好き嫌いが激しくそれが表に出るし、他人を簡単に信じるので騙されやすかったりもする。

サラリーマン的に見て、仲良く付き合うなら「おぼっちゃま」のほうが楽しいが、会社の社長ともなると油断はできなくとも、「叩き上げ」タイプのほうが会社を潰さないので、ついていってより頼りになる。期待を込めて言うが、菅首相は国民にとって後者のタイプではないか。

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