さて、自民党総裁選における菅首相の勝勢は事態が動いてから程なく確定したので、世間の興味は、菅首相による党役員と組閣の人事に早々に移った。人間の世界にあって、人事は、下世話だが、常に関心を集める話題だ。
その人事だが、近未来に「人事AI」があれば、こう作るだろうというような予定調和感のあるものに仕上がった。
マスコミ的には「派閥均衡」「論功行賞」などと称される。だが、複数の派閥の支持を得て総裁選に勝てたのだし、振り返ってみると、第2次安倍内閣の「菅官房長官」は安倍晋三氏に総裁選出馬を促し勝利に導いた菅氏の大きな論功に安倍氏が応えたものではなかったか。現段階で無難なバランス人事に特段の問題はない。無理に最初から独自のカラーを出す必要はない。
政治的腕力が強い「菅」「二階」の利害が一致
今回の人事からうかがえる菅首相の方針は、早期の解散総選挙と「改革」の重視ではないか。
菅首相ならでは人事のカラーは、総選挙での勝利を経て政権の正統性が認められてからでいいし、そもそも今回の布陣の任期は最長でも来年の秋の自民党総裁選までと短い。
党人事で、二階俊博幹事長、森山裕国会対策委員長、組閣で麻生太郎財務相、茂木敏充外相、萩生田光一文科相、梶山弘志経産相、赤羽一嘉国交相、西村康稔経済再生・コロナ担当相、小泉進次郎環境相などを留任させた体制には、前政権からの連続性とともに、早期に選挙になった場合の安定性を意識したことを感じる。
安倍晋三前首相と縁の深い加藤勝信官房長官や岸信夫防衛相の起用も安倍政治継承の象徴として納得できるし、選挙応援で人気がある小泉進次郎氏をボロの出にくい環境相に留任させて温存したことも適切だろう。
菅首相は、早期に解散総選挙を行って、組閣し直すのではないかと筆者は推測している。来年の総裁選を何もせずに一から迎えるよりは「総選挙で勝った首相」として権力を強化できるほうがいい。また、党内のキーマンである二階幹事長にとっても、幹事長の活躍の場である選挙があることも、「閣僚待ち」の議員に役を多く与えることができる頻繁な人事の機会があることも、悪くはないはずだ。政治的腕力が強い両者の利害が一致している。
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