台風が「大型化・凶暴化している」のは本当か 大型=大きな被害をもたらすという訳でもない

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台風が大きいということは、強風が吹く範囲は広くなります。しかし、サイズが大きくても、台風の強度としてはそこまで強くない場合もありますし、台風のサイズが小さくても十分強い台風になって、狭い範囲で大きな被害を出すこともあります。

2019年の例でいうと、台風17号は最大の強風域の半径が700kmという大型の台風でした。そして、最大風速は毎秒35m程度でした。それに比べると、台風15号は最大の強風域の半径は220kmと小型だったのに、最大風速は毎秒45mと非常に強い台風でした。これは、台風15号がコンパクトなサイズだからこそ、中心に向かって急激に気圧が下がり、強い風が吹いたという典型的な例といえます。

2019年の台風2つはまったくキャラが違った

ところで、台風にはそれぞれ個性があり、もたらす災害もさまざまです。2019年は台風の当たり年で、台風15号は令和元年房総半島台風、台風19号は令和元年東日本台風と命名されるほど大きな災害をもたらしました。大雨や台風、大雪などで歴史に残る災害が発生した場合、気象庁が命名しますが、台風に名前がつくのは1977年以来約40年ぶりで、いかにこれらの台風の影響が大きかったのかがうかがい知れます。

この2つの台風は、進路も発達のしかたもよく似ていたのに、発生した災害の種類が違ったのが印象的でした。

台風15号はいわゆる「風台風」で、強風による建物の倒壊や停電が主な被害でした。そして台風19号は「雨台風」で、大雨によって多くの河川が氾濫し、浸水に見舞われました。

「台風19号は台風15号の約1カ月後に日本を訪れましたが、風が強かった台風15号と同じような台風が再びやってくるということで、台風19号が接近する前には窓の補強をする養生テープが品切れになりました。しかし、私は『この台風で注意すべきポイントは風ではなくて雨のほうであり雨対策のほうが大事だ』と思っていました」(筆保教授)

なぜ、同じような進路や発達のしかたで、ここまで性質が違うのでしょうか。理由の1つは、台風が襲来したときの周囲の状況であり、季節がカギになります。おおざっぱにいうと、夏に来る台風は風台風になりやすく、秋に来る台風は雨台風になる傾向があるということです。

秋は前線が発生しやすく、雨が降りやすい状況です。そこに台風がやってくると、広い範囲で大雨をもたらします。2019年の台風15号が上陸したのは9月上旬でまだ夏の後半、台風19号は10月中旬だったので秋まっさかり、まさにこの季節からみられる傾向が台風の特徴を決めたようです。

まだまだ台風シーズンまっさかり。これからは雨に気を付けて対策したほうがよさそうです。特に、秋雨前線と台風が両方現れているときは大雨が降りやすいので要注意です。

今井 明子 気象予報士・サイエンスライター

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いまい あきこ / Akiko Imai

2001年京都大学農学部卒。酒メーカー商品企画部、印刷会社営業職、編集プロダクションを経て、2012年からフリーに。子ども向けや一般向けにわかりやすく科学を解説する書籍や記事を多数執筆。著書に『気象の図鑑』(共著、技術評論社)、『異常気象と温暖化がわかる』(技術評論社)がある。ほか、医療・健康、教育、旅行分野も得意。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師も務める。

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