菅首相、内閣・党役員人事に込めた「ある思惑」 狙いは来年9月の総裁再選狙う「本格政権」か

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9月16日、衆院本会議で首相指名を受ける自民党の菅義偉総裁(写真:EPA=時事)

菅義偉新政権が9月16日夜に発足した。安倍晋三前首相の突然の退陣表明からわずか3週間。あれよあれよの急展開で一気に後継候補の本命となった菅氏が、14日の自民総裁選(両院議員総会)での圧勝を経て、第99代首相の座を射止めた。

首相交代はおよそ7年9カ月ぶり。菅首相は「ゼロからのたたき上げ」を自称する苦労人で、無派閥で非世襲の首相は自民党政権としては事実上初めてだ。選出の経過などから「1年だけの中継ぎ」との見方もあるが、菅首相は本格政権とすべく、早期の衆院解散も視野に入れている。

ただ、国民の間にはコロナ禍での政治空白への反発も強く、早期に伝家の宝刀を抜けるかどうかは極めて微妙だ。

「菅カラー」アピールは限定的に

自民党所属議員の7割を占める5派閥の支持により、菅政権の党内基盤は安定している。しかし、安倍前政権の継承を大前提とする多派閥連合に支えられていることで、党役員や組閣人事は党内バランスを優先せざるをえず、縦割り行政打破などを目指す菅カラーのアピールは限定的となった。

菅首相は16日の就任記者会見で、新体制を「国民のために働く内閣」と命名。持論である縦割り行政の打破のため「規制改革を政権のど真ん中に置く」と力説した。具体的には、世界的にも高額とされる携帯電話料金の大幅値下げを打ち出したが、外交・安保政策やマクロの経済運営などは「安倍政権の継承」を繰り返すだけで国家像を明確に示すことはなかった。

その一方、安倍前首相による私物化が問題となった「桜を見る会」の2021年以降の開催中止を明言したが、森友問題で生じた公文書改ざん事件での再調査などはこれまでと同様に否定した。菅新政権は前政権の「負の遺産」を抱えたままの厳しい船出となった。

新体制の陣容をみると、菅首相とともに安倍前政権の3本柱を形成した麻生太郎副総理兼財務相と二階俊博自民党幹事長はいずれも再任・留任となった。注目の官房長官に、竹下派幹部で安倍前首相の側近でもある加藤勝信氏を厚生労働相から横滑りさせたのも、「党内バランスに配慮した安全策」(閣僚経験者)との受け止めが大勢だ。

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