菅首相、内閣・党役員人事に込めた「ある思惑」 狙いは来年9月の総裁再選狙う「本格政権」か
そこで問題となるのが、残り任期が1年余りとなった衆院解散のタイミングだ。就任会見で菅首相は、新型コロナの拡大阻止と社会経済活動の両立が最優先と繰り返し、衆院解散に関しては「1年以内に衆院解散・総選挙がある。時間の制約も視野に入れて考える」と述べるにとどめた。
政府与党内では、早期解散断行論を主張し続ける麻生副総理兼財務相だけでなく、二階幹事長も「いつでも対応できるよう準備している」などと解散風をあおっている。多くの衆院議員が選挙事務所の確保など選挙準備に着手しているのも事実だ。自民党議員の多くが「内閣支持率が高く、野党の選挙態勢が整わない今が、自民党には有利」との本音を漏らす。
「10月上旬解散説」が浮上するが…
このため、次期臨時国会を10月初旬にも召集し、冒頭の所信表明とそれに対する各党代表質問をこなしたうえでの「10月上旬解散ー11月1日投開票」という日程も取り沙汰される。しかし、その時点でコロナ感染が下火になっている保証はなく、「コロナ対応最優先」を打ち出した菅首相にとっては「悩ましい選択肢」(周辺)だ。
菅首相サイドは「そもそも、コロナ対策で政治空白を作らないために急いで菅政権を発足させたのに、1カ月の政治空白を余儀なくされる解散総選挙では国民の反発を招く」と不安も隠さない。日程的には年明け解散も含めたざまざまな選択肢はあるが、首脳外交の日程や2021年度の予算編成、国会審議を考慮すると、「実際にはどれも困難」(自民幹部)というのが実情だ。
このため、2021年夏の東京五輪・パラリンピック(9月5日閉幕)の開催を前提に、「コロナ最優先の立場を維持する限り、五輪後に事実上の任期満了選挙を選択せざるをえないのでは」(自民長老)との声も広がる。菅首相があえて内政での実績作りに全力投球する構えをみせるのも、そうした客観情勢を意識したものと受け止められている。
こうした中、安倍前首相は16日、菅首相をはじめとする官邸スタッフ総出での見送り式で、大きな送別の花束を抱えて満面の笑みで官邸を去った。自ら「体調はかなり良くなった」と説明し、「近々大好きなゴルフも再開する考え」(周辺)とされる。また、7年8カ月の安倍前政権で好悪取り混ぜた話題を提供し続けた昭恵夫人も、自らのフェイスブックに「長い間、本当にありがとうございました」と書き込み、フォロワーからの「いいね」が殺到している。
解放感あふれる前首相夫妻とは対照的に、16日夜の就任会見やその後の全閣僚記念撮影でも菅首相の表情は一貫して硬く、笑顔の場面はほとんどなかった。組閣から一夜明けた17日午前の官邸入りの際も、記者団に対し「まさに身の引き締まる思い」と緊張気味の表情で語った。
過去の政治史をみても長期政権の後は短命政権となるケースが圧倒的だ。前政権の「負の遺産」だけでなく、こうした歴史的宿命を背負う「たたき上げ宰相」の真価はまさにこれから問われることになる。
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