菅首相、内閣・党役員人事に込めた「ある思惑」 狙いは来年9月の総裁再選狙う「本格政権」か

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一方、菅内閣の人事も、これまでの経験と実績を重視した実務者優先の布陣となった。麻生副総理兼財務相、茂木敏充外相など前内閣の閣僚8人を再任。加藤官房長官や河野行革・規制改革担当相ら3人が横滑りで内閣にとどまった。

田村憲久厚労相や上川陽子法相ら4人の再登板組も、前内閣で菅首相が一緒に仕事をした閣僚仲間ばかり。念願の初入閣となった平沢勝栄復興相ら新人閣僚は5人で、第2次安倍政権発足以来最少だ。菅首相周辺は「いずれの人選も派閥に相談なく決めた」と強調するが、結果的には各派閥の勢力を反映した布陣となった点も、「菅流の安全運転」(自民長老)と見る向きが多い。

目玉閣僚の河野行革相

その中で、菅首相が自ら「目玉閣僚」と位置付けたのが河野行革・規制改革担当相だ。菅首相は持論の携帯電話料金値下げの実現に向け、「河野総務相」も模索したが、最終的には省庁全体の縦割り打破を断行するため、それを特命とする行革・規制改革担当相に河野氏を指名した。

過去に行革担当相の経験を持つ河野氏は、17日未明に及んだ就任初会見で「前回、行政改革を担当した際は行政の無駄をそぎ落とす行政改革をやったが、今回は国民や社会の側から見て価値を創造する、価値をつくり出す規制改革をやらなければいけない」と改革に邁進する意欲をみなぎらせた。

麻生派に所属する河野氏だが、留任した小泉進次郎環境相とともに菅首相の「お気に入り」としても知られている。菅首相は「『思い込んだら命がけ』という河野氏の突破力に期待した」(周辺)とされるが、未明の就任会見を「これこそ、さっさとやめたらいい」と言い放ち、さっそく物議をかもした。

河野氏は防衛相時代に、政府の既定方針だった陸上配備型迎撃ミサイルシステム(イージスアショア)の調達・配備中止を、事前の根回し抜きで突然発表し、政府与党内に大きなあつれきを生じさせた過去もある。菅首相はその突破力を買ったとされ、さっそく河野氏に「縦割り110番」の創設を指示したが、「河野氏が暴走すれば、両刃の剣にもなりかねない」(閣僚経験者)との危惧も付きまとう。

菅首相は総裁選後の党役員人事や組閣を通じて、2021年9月の総裁選での再選を前提とする「本格政権」を狙う意向をにじませた。安倍前首相のような「理念優先」ではなく、携帯料金値下げなど国民生活に直結する課題に積極的に取り組むことで、ご祝儀相場以降も高い内閣支持率を維持して総裁再選への道を拓く戦略とみられている。

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