菅首相、内閣・党役員人事に込めた「ある思惑」 狙いは来年9月の総裁再選狙う「本格政権」か

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憲政史上最長の在任日数を記録した安倍前首相は、特に首脳外交で国際的な評価を得た。菅首相はそれとは対照的に「外交手腕は未知数」(外務省OB)で、アメリカのトランプ大統領との個人的信頼関係を築いた安倍前首相のような首脳外交は「菅首相には無理」(同)との見方が支配的だ。就任会見でも菅外交への踏み込んだ言及はなかった。

新内閣発足に先立ち、自民党は14日の両院議員総会で菅氏を選出。15日には新たな自民党主要役員を選任した。

党運営の中枢は「たたき上げ5人組」

党役員人事では、絶妙の党内工作で菅氏圧勝の流れを作った二階氏の幹事長留任を決め、総務会長に佐藤勉元総務相(麻生派)、政調会長に下村博文元文科相(細田派)、選対委員長に山口泰明前党組織運動本部長(竹下派)を配した。菅、二階両氏と太いパイプを持つ森山裕国会対策委員長(石原派)の続投も決めた。

党運営の中枢となるこの5氏は、菅氏を支持した5派閥それぞれの領袖や有力幹部。このため、「総裁選での派閥談合を象徴する論功行賞人事」との批判も出たが、二階氏は「それはマスコミ特有の偏った見方」と反論した。

たしかに、5氏の所属は菅氏支持の5派閥にきれいに振り分けられてはいるが、二階、森山両氏を除く3氏はそれぞれの所属派閥が推した人物ではない。3氏はそろって菅首相との初当選同期で、それ以来続いてきた親交が選任の背景にあるとみられる。

しかも、二階、森山両氏も含めた全員が菅首相と同じ非世襲の党人派。このため、党内では「たたき上げ5人組」と揶揄する声も出ている。ただ、官邸主導で「政高党低」と呼ばれ、官邸と党側のあつれきも目立った前政権とは異なり、「政府と党は完全に一体」(党幹部)となった新体制は、「菅流のしたたかな人事」(同)ともいえる。

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