貧困層とお金持ち「アベノミクス恩恵」の大格差 「格差が拡大した」との通説をデータで検証する

拡大
縮小

一方、安倍政権の成果の1つに掲げられるものに「株高」がある。

<日経平均株価>……7年で1.3倍
2012年12月25日……1万0080円
2020年8月28日……2万2882円

安倍政権最大の功労であり、また最も力を入れた政策だった株価だが、ざっと2.3倍となった。安倍政権の誕生時に、日経平均に連動するETFを100万円買っていたとしたら、230万円(税引き前)になったことになる。

一方、株式と並んで典型的な資産と言える不動産はどうだろう。

<首都圏マンション平均価格>……7年で1440万円の価格上昇
2012年……4540万円(不動産経済研究所調べ)
2019年……5980万円(同)

となっている。

この7年間で、1440万円上昇したことになる。ちなみにコロナ禍の現在、平均価格は6124万円(7月)と、さらに上昇。首都圏に限らず近畿圏などのマンション価格も上がっている。一方で、マンションが高くなりすぎて買えない、あるいは買うのに苦労するような人が出てきている。

「不動産価格指数(国土交通省)」の2012年12月~2019年3月の数字を並べてみよう。

<不動産価格指数>……マンション以外ほぼ横ばい
住宅総合…… 98.6115.5
住宅地…… 94.5104.2
戸建て住宅…… 99.6103.3
マンション…… 101.2→ 148.8

マンション価格だけが大きく伸びて、価格の下落は止まりつつあるものの、住宅地や戸建て住宅は、この7年間でやや上昇傾向を保ったと言う程度だ。地方では相変わらず、下落傾向が続いている。 

都市部に本社を持つ一流企業や、都市部に住む富裕層が大いに恩恵を受けた7年8カ月だったと言っていいだろう。安倍政権の支持を最も鮮明にしている層と言っていい。

消費税2回アップ、国民負担率は5%上昇?

第2次安倍政権時代には、消費税を5%から8%、そして8%から10%(1部を除く)と2回も税率をアップさせた。当然のことながら租税負担率や国民負担率といったものが上昇することになる。安倍政権時代の国民負担率(対国民所得比)の推移を見てみると、次のようになる。

<国民負担率>……4.9%の負担増
2012年……39.7%
2020年……44.6%(見込み)

問題は、消費税のような貧富の差なく幅広く課税する間接税は、当然ながら家計全体に占める税金の比率が高くなるため、貧困層には重く、富裕層には軽い税金となる。そういう意味では、安倍政権はやはり貧富の格差を拡大させたと言っていいのかもしれない。

次ページ国民負担率を見てみると?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT