貧困層とお金持ち「アベノミクス恩恵」の大格差 「格差が拡大した」との通説をデータで検証する
では、平均給与の視点で見るとどうなるだろうか。国税庁の民間給与実態調査によると、民間企業の給与は次のような推移となる。相変わらず男女格差は大きいが、それでもこの7年間で大きく伸びた。(1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たり平均給与)
・2018年……440万7000円(男545万円、女293万1000円)
同調査では、2016年から男女別の平均給与を発表している。さらに、2012年からは正規雇用者の平均収入も公表している。それによると、正規雇用者と非正規雇用者の平均給与は安倍政権時代に次のように変化している。
・2013年……473.0万円/167.8万円/305.2万円
・2014年……477.7万円/169.7万円/308万円
・2015年……484.9万円/170.5万円/314.4万円
・2016年……486.9万円/172.1万円/314.8万円
・2017年……493.7万円/175.1万円/318.6万円
・2018年……503.5万円/179.0万円/324.5万円
正規労働者は35万9000円ほど上がった一方で、非正規労働者の上昇分は11万円にとどまる。正規雇用者と非正規雇用者との間には、絶対額で実に「324.5万円(2018年)」もの差がある。2012年から正規雇用者と非正規雇用者の収入の格差がさらに広がった。
安倍政権は2013~2019年の7年間で新規雇用者数を447万人(総務省統計局、労働力調査)増やした。安倍前首相は辞任会見においても「400万人を超える新規雇用を生み出した」と胸を張った。ただ、その実態は非正規雇用者数が254万人と、新規雇用者の56.8%を占めている。
少なくとも富裕層ではない世帯では、女性活用社会などのキャッチフレーズに基づいて「働き方改革」のスローガンのもとに、専業主婦や定年退職した後の高齢者などが働いて、世帯全体の収入は上昇したという側面はありそうだ。
少し改善した「相対的貧困率」
OECD(経済協力開発機構)の報告によると、日本の非正規雇用の労働者は今や雇用全体の38%に達しているそうだ。非正規雇用者の賃金の低さや職業訓練などの機会を得られないことによる格差が拡大し、日本にはいまや、その地域の周囲の人に比べて極端に貧しいことを示す「相対的貧困」に陥っている人々が、先進国の中ではアメリカに次いで多くなっていると言われる。
その相対的貧困率を見る限り、少しは改善したものの、大きな効果を上げたとは言えない。
・2015年……15.7%(同)
・2018年……15.4%(同)
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