アビガンがコロナに劇的に効く薬ではない現実

あれだけ注目されたその後はどうなっているか

そして7月10日に藤田医科大学が発表した結果では、6日目のウイルス消失率は前者のグループは66.7%、後者のグループは56.1%となった。つまりアビガンを服用したグループのほうがウイルスの消失率は高いという結果だった。

この結果は、一見するとアビガンを服用したほうがいいと思えるが、通常、薬の効果判定では2つのグループの差がたまたま偶然で生じたのか、それとも偶然ではない、つまりこの場合で言えばアビガン服用の有無によって生じたのかを統計学による計算で判定する。ちなみに統計学を用いた計算で2つの群で生じた差が単なる偶然ではないと判定された場合は「統計学的に有意差が認められた」と表現される。

結論を言うと、この結果は統計学的な有意差は認められない、つまり偶然起きた可能性が十分ありうるもので、両グループのウイルス消失率に差はないというものだった。極端に言えば新型コロナにアビガンは「効かない」という結果になったのである。

効いたとしてもそれはほんのちょっとの効果?

もっとも「効かない」は、わかりやすくするためにあえて強い表現を選んだもので、さまざまな事情を考慮すれば、そう単純ではない。

というのも新型コロナでは、約8割といわれる無症候・軽症患者は特別な治療を行わなくても発症から7~10日目までくらいに回復することがわかっている。藤田医科大学の臨床試験は、まさにこうした患者が対象であるため、そもそもウイルス消失が自然経過なのか、アビガンの効果なのかをもともと判別しにくい点で、アビガンの評価には不利な条件である。

また、この統計学的な有意差は臨床試験の参加者が多いほど証明しやすいという傾向がある。実際、この試験を率いた藤田医科大学微生物学・感染症科の土井洋平教授は、結果を発表したオンライン会見で臨床試験参加者が200人規模だったならば、統計学的に有意な差が得られた、すなわちウイルス消失率から見てアビガンが効いたと言える水準になった可能性があると指摘している。

ただ、感染症はいつどこで患者が発生するかわからず、日本の場合はほかの先進国と比べて新型コロナの感染者も少ないこともあり、臨床試験の参加に同意する患者を数多く確保することは、ほかの病気に比べても難しかった現実もある。

しかし、前述のような臨床試験の参加患者数が多ければ多いほど、統計学的に有意な差が検出されやすい、つまり効いたと証明しやすいということは、裏を返せば参加患者が多ければ多いほど、ごく小さな差を統計学的に有意な差として検出してしまう可能性があることも示している。

このため藤田医科大学側が言う臨床試験の参加者数を多くして得られたかもしれない差(効果)は、患者も医師も実感が得られない程度の小さな差だった可能性も否定できないのである。

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