民俗学から学ぶ感染症で亡くなった人の弔い方 対面が叶わない中で、どう故人を供養するか

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台湾では、風水の関係で葬儀までの期間がある程度長いため、遺体は冷蔵の安置室に安置される。台北などでは大規模な施設は多数の棺をまとめて安置しており、それとは別の部屋が「拝飯室」として、位牌を安置し供物を供える空間となっている。葬儀までの間、遺族は礼拝のためにここにやってくる。

台湾の 「拝飯室」 (写真:山田教授提供)

韓国の場合も、葬儀場にはいくつもの葬儀室が設けられているが、日本とは異なり、遺体はそれぞれの部屋に安置せず、地下部分に設けられた集合的な霊安室に置かれる。

葬儀は、その霊安室に遺体を安置したまま、それぞれの葬儀室で行われている。つまり、遺体と距離をとって葬儀ができる空間ができているわけだ。

納棺を代理で行う方法もある

「今回の事態においても、病院の霊安室を遙拝する枕飾りを自宅に設置することは、臨終まもない時点で自由に移動することが難しい遺族にとって、故人と向き合う場として考慮してもいいと思います」と山田教授は話す。

納棺も故人との別れを実感する重要な場である。死装束や故人が愛用していた衣服を着せ、遺品などを納めることは、故人への想いを添える実体的な行為として、重視されてきた。

実は納棺に関しても、補完する手段がある。葬祭業者も納棺に立ち会うことが可能な場合には、故人の衣服や遺品を葬祭業者が事前に預かっておき、それを遺族の代わりに納めることができる。慣習上というよりも現実的な代理行為であるが、納棺がなされないよりはいいとの考えもある。

なお「出棺時の花入れ」は、遺族の依頼があれば葬祭業者が花を用意することも可能だ。また眼鏡などの遺品は、火葬後、骨壷に収めることもよく行われており、火葬後の遺骨自体は、感染リスクはないので、遺族でも対応できる。

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