ディズニー実写「ムーラン」公開がざわつくワケ なぜこれほど作品論を上回る批判が集まるのか

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そのことで、アニメ版のヒロイン像に共感した人ほど実写版にがっかりしている様子です。主に「ムーランが歌わない」「ムーランの守護竜ムーシューがいない」ことが挙げられています。ミュージカル要素がないことで、ドラマチックにムーランの心情を伝えられていないのは確か。ムーシューがいないことで、緩急をつける効果のあるコメディ要素も確かに欠けています。とはいえ、いずれもアニメ版と比較した場合の印象の違いによるものです。それだけで評価が左右されてはもったいなくも思えます。

魔女役に投影したリアリティーのあるこじらせ女子

信頼度の高い作品レビュー集計サイト アメリカ・Rotten Tomatoesを見ると、公開日から初の週末を迎えた直後の9月7日時点での作品への全体の評価は78%とまずまず。評論家の間でも厳しい意見はあるものの「現代を生きる人にも共感できる女性のエンパワーメントと自己実現のストーリーに集中したことが成功した」といった意見が目立ちます。

なかでも、ニュージーランド出身の女性監督ニキ・カーロの起用が成功の要因と考える見方に賛同できます。カーロ監督の代表作はニュージーランド版『風の谷のナウシカ』とも言われる2002年の映画『クジラの島の少女』。マオリの伝統文化のなかで運命に立ち向かう少女の姿を描き、アカデミー賞をはじめとする世界の賞レースで注目された監督とあって理想とする人物だったようです。ディズニーが実写版で狙いたかった、リアリティーのあるムーラン像を描くのに最も適した監督と判断したからです。

『美女と野獣』『アラジン』のディズニーの最新作は、愛する家族を守るため男性と偽って兵士となった少女ムーランの物語を実写映画化したファンタジー・アドベンチャー(写真:c 2020 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.)

劇中のムーランからは無敵のマーベル系スーパーヒロイン感もありましたが、実際にひとりの少女の青春物語として捉えることもできました。なお、そのムーラン役は中国で人気のある女優リウ・イーフェイが起用されています。日本版声優は元宝塚男役トップスターの明日海りおが抜擢されています。

実はムーラン以上にリアリティーを感じる女性の姿もありました。実写版で初めてキャラクター化された魔女シェンニャンです。国際派女優コン・リーが演じています。日本版声優は演技派女優として評判の小池栄子。今回、声優としても本領発揮しています。

シェンニャンはファンタジー映画らしく鳥に姿を変えることもできる魔女なのですが、その魔力ゆえに人々から疎んじられて、国を追われ、ありのままの自分を受け入れてもらえる場所をさまよっていた過去を持ちます。そして、たどり着いた先は名俳優ジェット・リー演じる皇帝を殺害しようともくろむ男のもと。

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