首都圏で「違法金属くずの山」が次々現れた事情 廃棄物処理法守らず環境汚染する事例が続出
期限までに回答はなく、県は8月13日にヤードの立ち入り検査を実施。その結果、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、扇風機、掃除機、ビデオデッキ、マッサージ器など家電リサイクル法と小型家電リサイクル法の対象となる使用済み家電が持ち込まれているのを確認した。
T社に対する県の行政指導は続いている。
雑品スクラップは、鉄、銅、アルミニウム、プラスチックなどがごちゃ混ぜになったスクラップのことをいう。英語でミックス・メタルと呼ばれる。1990年代後半から、人件費が安かった中国に輸出され、そこで手作業で解体・分別するリサイクル業が盛んになった。
雑品スクラップは、街中を車で回ったり、空き地にのぼりを立てて不用品を回収したりする不用品回収業者を経て、鉄板で囲ったヤードで作業をする「ヤード業者」が集め、スクラップ輸出業者に売られ、輸出された。輸出量は年数百万トンに及んだ。
ところが、屋外集積所や雑品スクラップを積んだ船舶の火災が各地で続発。輸出先の中国では、金属スクラップを解体・分別し、高く売れる金属を取り出した後の残骸が野焼きされるなど、環境汚染を引き起こして問題になった。
正規ルートで処理される使用済み家電は67%
家電リサイクル法を所管する環境省と経済産業省の推計によると、雑品として輸出された家電4品目は2012年度で計130万台に上った。この法律で定めた正規ルートで処理される使用済み家電は、2012年度調べで全排出量の67%にすぎず、残り3分の1は雑品輸出を含め不正に処理されているとみられた。
こうした問題に対処するため、政府は廃棄物処理法を改正(2018年4月施行)し、有害廃棄物の国際移動を規制するバーゼル条約の国内順守法(バーゼル法)も改正(2018年10月施行)。家電4品目と小型家電28品目、これに給湯器、コンプレッサーなどを加えたものが混ざった金属スクラップを保管または処分する事業者には、都道府県への届け出を義務付けた。
一方、同じころの2018年4月、中国政府は固体廃棄物の段階的な輸入停止方針を公表。同年12月末に、廃電子機器、廃電線・ケーブルなどの輸入を停止し、事実上、雑品スクラップの輸入の禁止措置をとった。数年前から、世界的に海洋プラスチックが問題化し、中国による廃プラスチックの輸入禁止に注目が集まったが、このとき、雑品スクラップの輸入も禁止されていた。
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