アメリカの株価はいずれ一段と下落しそうだ 最新の雇用統計で先行き不透明感が高まった
一方、雇用の先行指標とされる失業保険申請件数は、8月29日までの週が88.1万件と、季節調整値の計算方法が変更されたこともあって大幅に低下した。4週平均でも99.2万件と、ロックダウン(都市封鎖)がはじまった3月21日までの週以降、初めて100万件の大台を割り込んだことは事実だ。
それでも、依然としてそれ以前の4倍近い高水準にあることに変わりはない。ちなみに、季節調整前の申請件数は前月から増加しており、こちらの方を懸念材料視する向きもあったことは記しておきたい。
FRB(米連邦準備制度理事会)による積極的な金融緩和や政府によるかつてない規模の景気刺激策によって、5月以降、景気は回復基調にあるとされてきた。だが、これだけ大量の失業保険の申請が行われている事実を軽視すべきではない。足元の雇用は、思ったほどには回復していない。
景気回復は、雇用低迷の上に成り立つ「砂上の楼閣」
つい最近までナスダック総合指数やS&P500種指数は史上最高値の更新を繰り返してきた。牽引したのはおもにハイテク銘柄だが、株価上昇は、こうした雇用の低迷のうえに成り立っている見せかけの景気回復を反映したものに過ぎないのではないか。
新型コロナウィルスの感染拡大によって、需要は大幅に落ち込んだ。一方でそうしたもののかなりの部分は、リモートビジネスやネットショッピングといったWEB関連の新たなサービスに置き換えられた。その過程で、それまで人間が作り出していた付加価値の多くがコンピューターにとって代わり、生産性が向上したのは想像に難くない。
そうした中でアメリカ政府の雇用維持プログラム(PPP)がタイミング良く打ち出されたこともあり、企業の人件費の負担はかなり軽減されたようだ。「新型コロナによるビジネスの落ち込みが限定的なものにとどまった」あるいは「逆に売り上げが増加した」ハイテク関連企業を中心に業績回復への期待が高まり、株価上昇の原動力となったのは当然かもしれない。
しかしながら、雇用の喪失の先に生身の人間が存在し、生活を営んでいる以上、こうした形での業績回復や株価上昇は、いわば砂上の楼閣に過ぎないし、長続きしないだろう。
人々が雇用の先行きや将来の収入に不安を覚えている間は、当然ながら財布の紐も固くなる。これまでは1人当たり1200ドルの直接給付金や、PPPによる雇用の維持、週600ドルの失業保険の上乗せ給付などによって消費が維持されていた部分があった。だが、それらの効果もこの先は急速に薄れていく。個人消費は足元ですでにペースが鈍っている可能性が高く、今後発表される消費関連の経済指標に、その影響が出てくる可能性が高そうだ。
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