アメリカの株価はいずれ一段と下落しそうだ

最新の雇用統計で先行き不透明感が高まった

PPPは、ひとことでいえば、企業に対して雇用維持のための資金を融資、後に一定の条件を満たしていれば、その返済を免除するプログラムである。融資額は給与の2.5カ月分となっている。プログラムが本格的に稼働し始めたのが4月に入ってからだから、すでにほとんどの企業は融資枠を使い切ったと考えてよいだろう。

失業保険の上乗せ給付は、すでに7月末で失効しており、ドナルド・トランプ大統領は週に300ドルを連邦政府負担、100ドルを州政府負担という形で上乗せ給付を延長する大統領令を発動した。だが、州政府の承認や運用手続きが難航したこともあり、現時点で実際に給付が行われている州は、わずか2州にとどまる。そもそも、大統領令で使用できる予算も限られており、仮に多くの州で給付が再開したとしても、資金がすぐに底を尽いてしまうという懸念が浮上している。

「景気支援策第4弾」の成立は、株価急落の後になる?

こうしたさまざまな不安を払拭するためにも、市場は現在協議されている景気支援策第4弾の早期成立を期待している。だが、5月に3.5兆ドル規模の支援策、「ヒーローズ・アクト」下院で成立させた民主党と、ひとまず5000億ドル程度の暫定的な額で合意できる部分を成立させ、後は大統領選後に改めて協議しようと提案しているホワイトハウスとの溝は深い。

現在、与野党協議は完全に行き詰った状態にある。7日のレイバーデーを含んだ連休明けには夏休みを終えた議会で協議が本格化するが、民主党側は下手にホワイトハウスの提案に乗って少額の支援策を成立させるくらいなら、交渉決裂で株価が急落し、トランプ大統領の支持率が低下するほうが大統領選に有利に働くとの腹もあり、今後もかたくなな姿勢を維持することになりそうだ。

一方、共和党は共和党で、小さな政府を標榜する保守派の議員の抵抗は根強く、巨額の財政支出を伴う法案には首を縦に振ることはなさそうだ。春に景気支援策が成立した際には、新型コロナウイルス感染の先行きが見えず、株価が急落するという非常事態だっただけに、こうした保守派議員も渋々賛成に回った。だが、すでにロックダウンも解除の方向に向かい、株価が高値を更新するという今の状況では、到底受け入れられるものではないということだ。

個人消費は、アメリカのGDPの約6割を占める経済の原動力であり、雇用の先行きに対する不安から消費の回復ペースが鈍れば、景気への影響も相当なものとなる。少なくとも今の状況を見る限り、市場が当初期待していたような年末にかけての急速な景気の回復が、実現することはなさそうだ。あとはそうした現実を、いつ市場が認識し始めるのかということではないか。市場が待ち焦がれる景気支援策第4弾の成立は、株価急落によって市場が混乱に陥り、ワシントンで危機感が高まった後でしか見られないのかもしれない。

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