コロナ株高の裏にあるお金ジャブジャブの正体 これからも株・債券・金のトリプル高は続くのか
実際、日銀の長期国債購入によってマネタリーベースが鋭角に増加する反面、実体経済に染み出したおカネの合計であるマネーストックは緩慢な増加にとどまっていた。ゆえに量的緩和の効果は限定的であるとの理解が広く共有された。
日銀は「マネタリーベース増加がデフレ脱却に一定の効果を発揮した」との見解を示しているが、実際のデータをみるとマネタリーベースとインフレ率の関係は実績・予想ベース共に不明確で、もちろん経済成長率との関係も希薄である。
現在の「ジャブジャブ」はマネーストックの急増
他方、現在の「ジャブジャブ」は本質が違う。マネタリーベース増加もさることながら、マネーストックが急増しているからである。
マネーストックとは「金融部門から経済全体(金融機関保有分は含ない)に供給されている通貨の総量」すなわち、企業、家計などが保有する現預金の合計などであるから、マネタリーベースとは根本的に異なる。
大規模な量的緩和策でも増加しなかったマネーストック(M3)はコロナ禍発生以降急激な上向きのカーブを描き、7月は前年比プラス6.5%と歴史的な伸びを示した。これは政府による家計支援策と銀行貸出の増加が主因である。
このうち銀行貸し出し(≒企業の預金残高)には、資金繰り目的の「守り」の借り入れが含まれている。
そのため危機が過ぎ去れば元のトレンドに復す性質があることを考慮する必要があるが、それでも銀行貸出(平均残高)は7月に前年比プラス6.4%と大幅に増加しており企業部門全体ではカネ余りの状態にある。また予算規模約13兆円の特別定額給付金はほぼダイレクトにマネーストック増加(預金増加)に繋がり、家計調査ベースの可処分所得は6月に前年比プラス19%と急増した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら