芸人のうまい例えが「頭のいい人」の証拠なワケ 本質を把握しているからこそ、人に伝わる

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余談ですが、ある数学者がこのような言葉を残しています。

「数学とは、異なるものを同じものとみなすアートである」(アンリ・ポワンカレ)

この言葉の本質が、少しでも伝わっていればうれしく思います。

ところでこの内容は一般的にアナロジーと呼ばれます。特定の事物に基づく情報を、他の特定の事物へ、それらの間の何らかの類似に基づいて適用する認知過程というのが一般的な説明です。しかし私は先述の3ステップで理解するのがもっとも多くの人に伝わる説明であると考えています。

アナロジーはすぐに上達するものではなく、長期的な訓練が必要です。しかし「アナロジーを練習しましょう」と申し上げても、ほとんどの人は何をしたらいいかがわかりません。そこで私は「例えを作ることを習慣にしてください」と提案しています。日常のさまざまな事象や事物についてそれをどんな例えで説明しようかを考えることが、必然的に3ステップを踏むことになり、アナロジーを身体で覚えることにつながります。

エクササイズを用意しました。

Q)「計画のないビジネス」を別の何かに例えてください

計画性のない人は短期的にはうまくいっても、長期的にはうまくいかない。だから合理的な準備をして計画的に仕事をしている人が最終的には勝つ。私はそう思っています。さて、あなたはこのお題をどう料理しますか。回答例としてひとつご紹介します。

STEP1. 特徴を抜き出す
市場が見えていない中で、やみくもに施策を打っている
STEP2. それを構造で捉える
「計画のないビジネス」=「市場が見えていない」+「やみくも」 
STEP3. 同じ構造の別物を探す
「暗闇でのボクシング」=「相手が見えていない」+「やみくもに繰り出すパンチ」

成果を出している人は「例え」がうまい

「計画のないビジネス」は「暗闇でするボクシング」のようなものである。たまたまヒットすることがあってもそれは偶然にすぎず、長期戦になれば疲れて自爆するだけ。

『数学的に考える力をつける本: 本質をつかむ 考えがまとまる 説明上手になる』(三笠書房)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「例え」を作るメリットは2つあります。1つは物事の構造を明らかにできるので、本質を把握しやすいこと。もう1つは、何かを伝えるときに比喩を使うことで「伝わる」コミュニケーションができること。前者は思考。後者はコミュニケーション。すべてのビジネスパーソンに必要なリテラシーです。

冒頭では芸人をテーマにしましたが、これはあくまで事例の1つにすぎません。どんな世界でも成果を出している人は思考の質が高く、伝わるコミュニケーションができます。彼らはなぜそれができるのか。アナロジーという、数学でも説明できる思考法が上手だからです。

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