芸人のうまい例えが「頭のいい人」の証拠なワケ 本質を把握しているからこそ、人に伝わる

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「例え」とは何か。私の定義は、あるものを同じ構造の別のもので説明することです。松本さんは「お笑い」というものを「七並べ」と説明していますが、これは両者が同じ構造をしているから言えることです。

私はお笑いについては素人ゆえ、松本さんがどのような構造化をしてこの例えにたどり着いたのかを解説することはできません。しかし、松本さんの頭の中については解説できます。結論から言えば、特徴を抜き出し、それを構造で捉え、同じ構造の別物を探したのです。

STEP1. 特徴を抜き出す
STEP2. それを構造で捉える
STEP3. 同じ構造の別物を探す

身近な例で解説します。例えば「恋」という概念を別の何かで例えてみます。

STEP1. ​特徴を抜き出す
「恋」とは、男女が1対1で一緒にする行為である(男女ではないこともある)
STEP2. それを構造で捉える
「恋」=「男」+「女」 という足し算の構造になっている
STEP3. 同じ構造の別物を探す
「炭」=「火」+「木」 例えば「炭」もこれと同じ足し算の構造をしている

以上のプロセスにより、次のような例えを作ることができました。あまりうまく言えていないかもしれませんが。

「恋」は「炭」のようなものである。異なるものが合わさることで燃え上がる。そのときの風によって、すぐに消えてしまうこともあるし長く燃え続けることもある。

「構造で捉える」という数学的思考

この「構造で捉える」という行為が、実は私の専門でもある数学的思考と密接に関わっています。ご存じの通り、数学とは極めて抽象的な情報を扱う学問です。先程の「恋=男+女」は具体的な情報ですが、これを抽象的な情報にすると次のように表現できます。

Z=X+Y

そしてこの抽象的な情報と同じ構造をしている別の具体的な情報が「炭=火+木」になります。つまり、具体A→抽象→具体Bというプロセスを踏み、具体Aと具体Bは同じものであると説明しています。

同じように考えれば、次の数学の問題は「同じ」と考えていいことになります。

問題A 時給1000円のアルバイトで5万円の給与をもらった。何時間働いた?
問題B 単価3万円の商品で360万円の売り上げを得た。何個売れた?

問題Aにおいて働いた時間をXとすれば、この問題で提示されている事実は「50000=1000X」という数式で表現できます。そしてこれは次のような構造をしていることになります。

(与えられた数S)=(与えられた数T)×X

この構造と同じ別のものを考えれば、この問題は「同じ」ものがいくらでも作ることができます。皆さんが学生時代に解いた数学の問題は、このようなプロセスで作られています。数学の問題を作る行為と例えを作る行為は、実は同じなのです。

次ページ「アナロジー」という思考法 
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