オンラインサロンに金払う人が満たす心の奥底 「選ばれた自分」は物語に貢献して成長を果たす
これはどのようなコミュニティにも必然的に生じるウチとソト――包摂と排除――という機能と一体になっているのである。「わたしたち」と「わたしたち以外」を分けて身内を優先することは、家族や会社、地域共同体から国家に至るまで規模の大小を問わず例外はない。とりわけ流動化の著しい現代において「どこかのコミュニティの一員」になるということは、多かれ少なかれ「選民的なニーズ(選ばれている感覚の追求)」の逃れがたい引力の影響圏内に入ることを意味している。
「関係性」を「財」の観点から眺めると、より問題の普遍性が明確になるだろう。
経済学者のロバート・H・フランクは、「幸福度」のバランスを説明するために「地位財」と「非地位財」という考え方を提唱した(『ダーウィン・エコノミー 自由、競争、公益』若林茂樹訳、日本経済新聞社)。「地位財とは、その評価が背景にきわめて影響を受けやすい財」であり、「非地位財とは、評価に対する背景の影響が相対的に低い財をいう」。
非地位財=絶対的な幸福感のニーズに根差す
かみ砕いて説明すると、「地位財」の典型は「社会的な地位」であるが、そのほかにも家や車、所得や資産など物質的なもの、数値化できるものが多い。一言でいえば「他者と比較することで得られる幸福」といえる。他方「非地位財」は、健康や愛情、自由、自主性、良質な環境といった「他者との比較なしで得られる幸福」を指す。つまり前者は相対的な幸福感であり、後者は絶対的な幸福感である。つまり、オンラインサロンは、いわば「非地位財」的なニーズに根差したサービスという見方ができるのだ。
現在流行っているオンラインサロンを見渡してみると、いくつかの興味深い共通点が浮かび上がってくる。
(世間とのズレを抱えている)カリスマ的なサロンオーナー、新規事業を起こす・芸術作品を作るなどの「魅力的で分かりやすい物語」、その物語に批判的な「外敵の存在」(コミュニティの外側にいる無責任な人々)などだ。ここで重要なポイントになるのは、「物語に真実味を与える困難」と「直接参加の機会」である。キングコングの西野亮廣氏は、オンラインサロンの将来像をどう考えるかと聞かれて、次のように答えている。
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