懸念される民主党の「自民党化」

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懸念される民主党の「自民党化」

塩田潮

 年初以来の小沢問題は2月4日の検察の処分決定で一区切りとなった。捜査の新しい進展の可能性は残るが、政治の焦点は小沢幹事長の参考人招致など国会の対応に移っていくだろう。
 与党側は「鳩山・小沢ダブル疑惑」の嵐は去ったと胸をなで下ろしているようだが、簡単に「天気晴朗」とはならない。夏の参院選を控えて、世論の動向が今後の政治を左右するが、国民は回答を留保し、事態を慎重に見極めて最終判断する気でいるからだ。

 そこで気になるのが民主党内の空気である。
 ダブル疑惑の重い鎖がやっと取れたという安堵感と同時に、厭戦気分というか、対決回避ムードが広がっているように映る。宿願の政権交代を実現し、さあ改革に挑戦と腕まくりして走り始めたら、暗雲が垂れ込め、新政権は迷走を余儀なくされた。なんとか暗雲は去りそうな空気となったが、スタート時の意気込み、熱気、スピード感はどこかへ行ってしまった感がある。
 対決だけではうまくいかない、理想よりも現実の対応を、急がば回れといった気分が充満しつつある。ここで戦闘意欲を失えば、蔓延するのは民主党の「自民党化」だが、懸念は現実となり始めている。

 この段階で何よりも重要なのは態勢の立て直しだ。
 鳩山首相は「省庁再編」「国家公務員の幹部人事改革」「政治主導確立法」など懸命に挑戦課題を打ち出しているが、緩んだタガの締め直しは「スローガンの絶叫」だけでは成功しない。誰かが強力な指導力を発揮して、もう一度、闘争心に火を点け、アクセルを吹かし、改革の戦士を戦場に向かわせなければならない。
 「傷だらけの猛獣幹事長」がここで吠えるのは逆効果だ。「宇宙人首相」には無理なら、「小・鳩」以外の第三の指導者の出現を待つしかない。だが、党よりも自分、目立ちたがり屋だけでまとめ屋がいないという年来の欠陥を克服できるかどうか。
 危機こそ好機と見て、新型リーダーが浮上するなら、民主党も捨てたものではないが。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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