ドラッグストアの黒子「日用品卸」の業績に明暗 コロナ影響で売れゆき激減の化粧品で差

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PALTACはサプライチェーンの効率化を推進しており、独自の物流システムを構築するなど多額の投資を行ってきた。その集大成が2019年11月に稼働した大型物流施設「RDC埼玉」(埼玉県杉戸町)だ。年間出荷能力は1200億円規模になる想定で、約230億円を投じて建設した。

RDC埼玉では、商品を積み下ろすアームロボットやベルトコンベヤーなどの省人化設備が多数稼働している。「MUJIN」や「Kyoto Robotics」など、ロボット制御技術に優れたベンチャー企業と協働し、その独自技術を採り入れている。

飲料水など重い荷物を自動化設備で荷下ろししているほか、メーカーから届けられる商品データベースへの登録を自動化している。自動倉庫に詳しいコンサルティング会社ローランド・ベルガーの小野塚征志パートナーは、「物流業務のどの工程を自動化すれば最も効果が出るのかをPALTACはわかっている。他社と比べても省人化・自動化の点でかなり進んでいる」と話す。

レイアウト見直しで生産性向上

コロナ禍で消毒液などの需要が急拡大し、出荷量が通常の2倍に膨れ上がった際にも、アームロボットなどを24時間稼働させることで物流施設内の作業員を増員することなく対応できた。

「既存の物流拠点でもオペレーションや設備のレイアウトを見直したことで生産性が3割ほど向上した。当面はRDC埼玉で新たなノウハウを蓄積し、さらなる効率化につなげる」。PALTACの嶋田政治取締役常務執行役員はそう自信をのぞかせる。 

【2020年8月31日11時37分追記】初出時のローランド・ベルガ―の小野塚氏、PALTACの嶋田氏の肩書きが誤っていました。お詫びの上、表記のように修正いたします。

対するあらたは、コロナ禍でトイレットペーパーなどの出荷量が急拡大した際には、倉庫内作業員の増員で対応しており、まだまだ省人化・自動化の余地が大きい。2020年8月に発表したあらたの中期経営計画では今後3年間で約300億円を投じ、物流拠点の新設や既存拠点の物流自動化等を推進する計画だ。ただ、首都圏で大型物流施設を新設する計画はあるものの、条件の合う土地を選定中で、稼働見通しも立っていない。

利幅の薄いビジネスである卸売業にとって、物流の効率性をいかに高めるかはまさに生命線。その点ではPALTACに一日の長があるといっていい。

ドラッグストアとスーパー、コンビニ間での三つ巴の小売り戦争が繰り広げられる中、その黒子役である日用品卸会社もしのぎを削っている。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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