2022年から団塊世代は75歳以上になり始め、2025年には全員が75歳以上になる。1人当たり医療費や介護費がこれまで以上に多くかかるようになる時期に、政権を担当することが予想される次期政権にとって、社会保障こそが経済政策において最重要課題の1つとなる。
だが、ポスト安倍が今の安倍政権と同じ社会保障のスタンスを取り続けるなら、無難なように聞こえるが、それでは失格である。第2次安倍内閣以降、消費税率を10%にするまで、社会保障・税一体改革が推進されてきた。一体改革では、消費税の増税財源を活用して社会保障の充実(後に教育無償化も加わる)を進めてきた。
ちなみに、消費税は社会保障財源になっていないなどというのは、揚げ足取りの極みである。毎年度国会で議決される予算書で、その消費税収は、社会保障4経費(子ども子育て、年金、医療、介護)に充当することが規定されている。国権の最高機関の議決でそのように規定している以上、消費税の増税財源の正統な使途は社会保障4経費である。
グランドデザインなき社会保障改革
社会保障・税一体改革は、消費税率を10%にするところまでである。その先の社会保障の姿について、安倍政権では全世代型社会保障改革の検討を始めているが、グランドデザインはまだできていない。
つまり、次期政権の社会保障政策は、現時点では海図なき航海になる。しかも、現行制度が盤石であればよいが、さまざまな綻びがあり、それを改めなければ危うい航海になりうる。医療の綻びについては、「コロナで医療崩壊しかねない日本の医療の弱点」でも指摘したところである。
そこで1つの焦点となるのが、消費税の扱いである。前述のように、社会保障・税一体改革では消費税は社会保障財源と位置づけられてきた。ただ、「ドイツが『消費税率3%下げ』に踏み切る意味」で言及したように、ヨーロッパで消費税(付加価値税)の一時的な引き下げが実施されており、日本でも消費減税を求める声がある。
では、次期首相は消費減税を支持できるだろうか。
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