消費減税はポスト安倍の政策課題になりうるか 減税は安倍政権の成果を否定することになる

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減税は支持する声があっても、増税は不人気である。次期首相が、いずれ自らの政権で増税を実施せざるをえない消費減税を支持すれば、自縄自縛である。政権に就くからには、増税以外で実行したい政策があるはずだ。

社会保障財源を消費税には頼らないという考え方もあろう。しかし、税率1%の税収で2.5兆円ほどになる消費税に代わる別の財源を見つけるのは容易ではない。

2020年代の経済政策をどうするのか

所得税で累進度を高めるのは所得格差是正に寄与するが、2.5兆円もの税収を得るような所得税改革を行うなら、年収500万円以上の納税者に増税となるような改革を行わなければならない。つまり、「高所得層のみ増税」という所得税改革では不十分な税収しか得られず、十分な税収を得るには中所得層にも及ぶような増税が必要だ。

法人税で増税をすれば、日本企業が海外に拠点を移し、日本での雇用が失われる。相続税は、今の税制でさえ消費税率1%分の税収にも満たない税収しか上がっていない。消費税以外の税目には改革すべき点はあるが、それで大きな財源が容易に得られるというものではない。

そうしたわが国の税制の構造を踏まえて、次期首相が消費減税を支持すれば、社会保障の財源を代わりにどう確保するのか。政策の不整合を容易に追及されることになる。

ポスト安倍候補は、現時点ではまだ政策論議なき人選という状況である。自民党総裁選を通じて、コロナ後を見据えて2020年代の経済政策をどうするのか。まっとうな議論が求められている。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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