安倍晋三首相は8月28日、持病の悪化を理由に突如辞意を表明した。安倍首相の連続在任日数が最長を記録した直後のことだった。同時に、安倍首相の後任を選出する自民党総裁選挙に向け、「ポスト安倍」がにわかに動き出した。
辞意表明が予期できない形であったこともあり、ポスト安倍候補は、綿密な次期政権構想を固めきれていない状態だろう。そのため、次期政権がどのような経済政策を講じるのか。高い確度で見通すことは容易ではない。
社会保障はおろそかにできない
次期政権がまず直面する最重要課題は、新型コロナウイルス対策である。次期首相は、まさに危機対応能力が問われることになる。ただ、コロナ対応が長きにわたることはない。感染収束の時期は予断を許さず、平時の対応は残るかもしれないが、危機的な状況は早晩収まるだろう。
コロナ後を見据えれば、まずはコロナの影響を受けた経済的打撃にどう対処するか、すなわち景気対策が最優先とする見方もあろう。しかし、社会保障、とりわけ医療、介護、年金は、景況がどうであれ、国民の日常生活に大きく影響を与えるものだ。景気が悪くても、社会保障をおろそかにはできない。
加えてコロナ後は、感染拡大を恐れて経済活動を制限していた状態からコロナ前の経済活動の水準に戻ってゆく過程に入る。元の経済活動の水準にいつ戻るかは予断を許さないが、コロナ後は景気回復期に移行する。景気回復期に入るのだから、ポスト安倍が景気対策に力を入れるといっても、それが次期政権の最重要課題であり続けることはない。
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