「あれがやめられない」と悩む人を救う対処法

注意散漫になる衝動を感じたらどうすれば?

被験者は、5分間シロクマのことを考えないように、と指示された。すると彼らは平均で1分間に1回、シロクマのことを考えた。まさにドストエフスキーが予言したとおりだ。

しかし、ウェグナーの実験はそれだけでは終わらなかった。同じグループの被験者と最初の実験には参加していない別のグループに、今度はシロクマのことを思い浮かべるよう指示すると、後者より前者のほうが、シロクマのことを思い浮かべる回数がずっと多かった。「この結果は、最初の5分間に考えないようにしたせいで、心の中でリバウンドが起きて、より頻繁に考えるようになったことを示している」と、ウェグナーはモニター・オン・サイコロジー誌の論文に書き、のちにこの傾向を「皮肉過程理論」と名づけ、何かを考えないようにするのが難しい理由を説明した。

この理論が「皮肉」と呼ばれるのは、欲求をいったん抑制し、のちにそれを解くことで、その欲求がより多くの報酬をもたらすようになり、習慣化するからだ。

欲求を抑え込み、反すうし、結局は屈する、というサイクルを繰り返すと、そのサイクルは永続的なものになる。望ましくない習慣の多くは、このサイクルに駆り立てられている。

タバコへの渇望の意外な要因

例えば、喫煙者の多くは、タバコへの渇望をもたらしているのはニコチンだと考えている。

間違いではないが、まったく正しいわけでもない。ニコチンは神経を刺激し、多幸感をもたらすが、客室乗務員を被験者とする実験により、タバコへの渇望は、かつて考えられていたほどにはニコチンとは関係のないことが明らかになった。

この実験では、タバコを吸う客室乗務員の2つのグループを、イスラエルから別々の旅客機で送り出した。一方のグループは、3時間のフライトでヨーロッパへ、もう一方のグループは10時間のフライトでニューヨークへ向かった。もちろん、客室乗務員がフライト中にタバコを吸うことは禁止されている。両グループは、フライトの前と途中と後で、タバコへの渇望の度合いを点数で記録するように指示された。

もし、ニコチンが脳に及ぼす影響だけが原因なら、どちらのグループも、最後にタバコを吸ってから同じ時間が経つとタバコを吸いたくなり、時間が経てば経つほど、彼らの脳はニコチンを科学的に渇望するようになるはずだ。だが、事実は違った。

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