バレーボール大山加奈が苦しむ"後遺症"の過酷 益子直美さんと考える「バレー界を変える方法」

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益子:私は現役時代から、海外とは大きな違いを感じていました。今でこそブラジルやアメリカは世界のトップオブトップですが、当時は基本的な技術が身に付いていなくて。ジャンプが逆足だったり。そこだけ見ると、日本のほうが絶対に基本に忠実で、パスも正確でした。

大山:そうだったんだ。あっという間に強くなりましたね。

益子:そうなの。技術は粗削りなんだけど、フルセット目の13対13とか、そうやって競ったときはめちゃくちゃ強いの。例えば、私なんかそういう大事な場面になると「もう私のところにはトスを上げないでほしい」って願ってるわけ。エースなのに、ノミの心臓なんです。

――なぜならば、ミスしたら怒鳴られるから、練習や普段の試合で自分自身でトライしていない。だから、自信が育ってなかったんですね。それに、そこでもミスしたら責められる文化ですものね。

益子:そう。だから、どうしよう、っていうのがあって。でもアメリカの選手って、みんな、「私に持ってこい!」って全員が自分にトスを要求するんですよ。

大山:「カモン! カモン!」って言ってますよね。

益子:もうそれが本当にすごい。どういうバレーをしてきてるんだろう?って衝撃でしたね。だから、現役のときからアメリカはこの先絶対に強くなる、怖いってずっと思ってたら、やっぱり強くなった。

――日本も、自信のない選手を否定するのではなく、選手の自信を育てる指導を目指さなくてはいけませんね。そのためにも、育成期に「バレーが楽しい!」という感覚を根付かせてほしいです。益子カップはその点で進化していますね。

益子:いま6回。4回目くらいまで優秀選手賞みたいなのがあったのですが、少し前から「スマイル賞」に変わりました。「監督スマイル賞」もあります。

大山:すごくいいですね!

益子:10回は開催しようと決めてるの。あと4回。10回目大会はたぶん点数をつけていないと思うな。

コロナで全国大会がなくなったときの衝撃の本音

――大山さんはSNSを通じて、中高生など若い選手と交流されていますね。

大山:コロナで全国大会がなくなってみんな悲しい思いをしてるんだろうな、と勝手に想像してたんですけど「全国大会がなくなってホッとした」っていう高校生からの声が届いたんです。私自身強い衝撃を受けましたが、本人も「こんなふうに考えてることはおかしいんじゃないか」「自分は間違ってるんじゃないか」って落ち込んでいました。

益子:コロナがきっかけで、自分のバレーとの向き合い方に気づいたんだね。

大山:それをツイッターに書いたところ、「僕も」「私も同じです」と共感する声がいっぱい集まって。保護者の方から「うちの子もです」という声もたくさん届きました。全国大会がなくなってホッとする子がこんなにいるんだと思ったら、バレー界を本当に何とかしなきゃいけないなと思わされました。こちらの想像だけで物事を捉えちゃダメだ、きちんと声を聴かなきゃいけないなって。

益子:本当にそう。子どもたちの話を聴かなきゃいけないよね。

大山:ホッとしたって言ってきた高校生からは、「こういうバレー界じゃなくて、もっと子どもたちが楽しめるようにしてください」っていうことも言ってくれたので、「頑張るよ。必ず変えるからね」っていうことを伝えさせてもらいました。

(聞き手/ジャーナリスト 島沢優子)

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文芸家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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